2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧
すっかり長くなったから 2日目のイリジウムで起きたことは 簡単に記しておきたい。 この日はなんとか時間を工夫して ファースト・セットに間に合うように ぼくはイリジウムまでやって来た。 入口で案内された席は ステージの右袖で スコットの目の前。 いや …
NRBQのライヴが終わったイリジウムの客席で ドラマーのコンラッドと 立ち話をしているふたり連れの男女に 見覚えがあった。 ぼくはそのふたりを その夫婦を よく知ってる。 もうずいぶん前だけど 「リズム&ペンシル」のジョナサン・リッチマン号や 別の雑誌…
終演後、 テリーにあいさつをして帰ろうと待っていたら 先にジェイクが出てきたので話しかけた。 「またインタビュー出来たらいいんですが」と。 「今夜はわたしはもう疲れてしまった。 明日も来るのかい? またそのときにでも話をしようよ。 今は12年前とは…
「ア・スマイル・アンド・ア・リボン」を歌い終えても テリーは何も言わずに 笑っているだけだった。 なんか言うのは野暮……だろ? みたいな笑み。 そして 気分を変えるかのように トロンボーンでこのツアーに参加しているアート・バロンが デューク・エリン…
ジェイクが舞台を降り、 ふたたびレギュラー・メンバーに戻ったNRBQで テリーはすこし足を組んで考えた様子をして、 「うん」とうなづくような仕草で グランド・ピアノを弾きはじめた。 ゆるめのマーチング・ビート。 このイントロは 「ヒット・ザ・ヘイ」だ…
舞台にあがったジェイク。 さて、なにをやろうかねとあたりを見渡し、 テリーと目配せ。 「あれをやろうよ」と テリーが提案し バンドが演奏をはじめる。 夢にまで見たジェイク+NRBQ。 そして ジェイクが歌いだしたのは 新作にも入っていないぼくの知らない…
「ここで一曲、クレムに歌ってもらおうぜ!」 テリーが唐突に言って ぐいぐいぐいっと鋭角的なイントロを弾きだした。 「ゲット・ア・グリップ」。 アルバム「スクラップス」収録の これも近年のライヴでは珍しい曲。 ソウルフルなハイトーンの初代ヴォーカ…
何年前のNRBQのジャパン・ツアーだったか、 全公演に帯同したのをいいことに ちいさなメモにセット・リストを書き付けながら見ていたことがある。 興奮しながら書いていたから 曲目はいい加減。 わからないカヴァーは特徴だけ書いて あとでトムに訊いた。 「…
楽屋から出てきて席に着こうとしたとき、 見かけた顔が話かけてきた。 マイケル・シェリーだ。 2001年にマーシャル・クレンショーとの来日公演を ぼくが手伝って以来の仲。 当時、彼は ソロとしても良い感じのアルバムを出して売り出していたけど、 ぼくは彼…
テリーとぼくの話がしんみりとしかけたとき 楽屋にだれかが入ってきた。 本当なら ぼくが一番会いたかったひと ジェイク・ジェイコブスだった。 「よっこらしょ」と日本語で言ったわけではないが すこしくたびれた様子で ジェイクはぼくたちの近くに腰掛けた…
場内にはいると 雰囲気はアフター・アワーズ。 現在のNRBQのメンバーである ギターのスコット・リゴン、 ベースのピート・ドネリー、 ドラムスのコンラッド・シュークルーンが、 そこここでなじみのお客と立ち話に興じていた。 そして楽屋口のほうに テリー…
イリジウムは レス・ポールが亡くなるまでの数年間 毎週月曜日にライヴを行っていたことでも有名だ。 それから、 つい何年か前までは 毎週日曜日のブランチ・コンサートはボブ・ドロウがやっていた。 ぼくはボブ・ドロウは見ることが叶わなかったけれど、 レ…
これから書く話は 2012年の1月17日と18日の2日間、 マンハッタンのジャズ・クラブ、 イリジウムにNRBQの2デイズを見に行ったときのこと。 もともと ぼくがこのライヴを見に行く予定を立てたのは ジェイク&ザ・レスト・オブ・ジュエルズの名義で 素晴らしい…
このブログの日付は1月18日ですが、 今現在はもう2月2日です。 時系列的には思いきりとんじゃってますが、 告知です。 2月4日(土) 都内2ヶ所でイベントをハシゴします。 その1。 東京新木場STUDIO COASTで開催されるライヴ・イヴェント 「De La FANTASIA 2…
よく晴れた冬の寒い朝 駅まで迎えに来てもらい 車で目的地に着いた。 鍵をあけてなかに入る。 昔はこの家に来ると なかでたいていやかましく音楽が鳴っていて ドアをどんどんと叩いたり ドラマーの名前をおおきな声で呼んだりしなくちゃいけないことがよくあ…
日本人とドラマーは基本的に英語で会話している。 「アメリカの猫はやっぱり英語でしゃべっているのかな?」 日本人が大マジメな顔でドラマーに訊ねたことがある。 ドラマーはこう答えた。 「わからないな。 でも、そうだとしたらおれの訛りになってるかもね…
その晩 ふたりは何枚もレコードを聴いて それからドラマーが録り溜めていたDVDで 60年代のビートバンドやポップシンガーの珍しい映像に見とれたり くだらない映像を見てゲラゲラ笑ったりした。 ふたりともいい加減酔っていた。 今日はこの部屋にわたし以外に…
夜中の一軒家では いつも大音量で音楽が流れていた。 わたしたち猫には なにがどれくらいおおきな音で鳴ろうと あんまり関係ない。 急にドガーンと爆発するような音楽にちょっとあせるけれど。 今日は昼間からドラマーと日本人はどこか遠くの店に出かけたみ…
突然家に乱入してきた酔っぱらいとおびえる日本人。 両者がまるでメグとフェデラルみたいにすくみ合っているときに トイレの水を勢いよく流す音がして ドラマーが飛び出してきた。 「おい! やめろよ! おれのたいせつな友だちなんだ」 うろたえるドラマーを…
ある晩 ドラマーと日本人が例のごとくレコードをとっかえひっかえ聴きながら いい気分で酔っぱらっていたときだった。 ドラマーがトイレに立ったすきに 入口のドアがバタンと開く音がした。 こんな夜中にだれだよとは思わない。 ドラマーの友人には 昼夜は関…
ある年の冬。 一通の手紙が届いた。 例の日本人からで 近況を知らせる手紙と一枚の写真が入っていた。 ドラマーはそれを見て とてもせつない顔をした。 わたしには文字は読めないけど テーブルに置かれた一枚の写真はわかった。 わたしとおなじ種類の つまり…
でもまあ 猫に言いたいことはそんなにたくさんないと思うんだ。 たいての場合 言いたいことはひとつだけ。 「おなか空いた」 「退屈だから遊んで」 あとは自由でいたいから何も求めない。 欲しいものを欲しいときに 的確にアピールする術を探しているってと…
わたしはこの家で王様ぶって暮らしているけど ドラマーはすこしだけわたしに不満があるらしい。 それはわたしがあんまり「にゃあ」と鳴かないってことだった。 わたしは無口な王様なのだ。 しかも ただでさえ無口なうえに わたしの声はとてもちいさくてかす…
ドラマーはドライバーを買って出て ほうぼうのレコード店を案内した。 それが先方には結構好評で そんなやりとりが何年かつづいた。 そのうち その日本人のうちのひとりが ドラマーにこう言った。 「この家に泊まってもいいかなあ」 ドラマーはその申し出を…
いつからだったかな。 この家を日本人たちがちょくちょく訪れるようになった。 どうやら相手はレコード屋らしく 最初はドラマーは手持ちのレコードを何枚か売ったりしてた。 そのうち もちろん彼らからのリクエストでもあったんだけど ヒマな時間を見てドラ…
Let's rock and roll for my dearest friend Tom Ardolino.
メグとフェデラル 二匹がけんかしてるときに この家の真のあるじである わたしの役目が重要になる。 二匹がにらみあって「ぐるぐるぐるっ」と喉を鳴らし 尻尾を逆立てて威嚇をはじめたら わたしの出番。 悠然と二匹のあいだに立ち入って 「んぎゃっ」と ひと…
わたしとドラマーがレコードに囲まれて暮らしているこの家に 新顔が現れた。 一匹はメス猫のメグ。 もう一匹はオス猫のフェデラル。 メグはかわいいかわいい美人猫なんだけど ものすごい人見知りで お客さんが来るといちもくさんにベッドの下に隠れたり 地下…
わたしは太った三毛猫。 長毛種。 飼い主のドラマーも太ってる。 肉や魚が食べられないのに お菓子が大好きなドラマーは アメリカ人にしては背はひくいほうだけど からだは順調に横に伸びた。 若いころはかわいげのある少年みたいだったらしい。 わたしが知…
この家には 三匹の猫と一匹のドラマーがいる。 ドラマーは旅の多いバンドに長くいて 家を留守にすることが多かった。 わたしが生まれて この家にくるずっと前から ドラマーはその仕事を続けていた。 19歳のときから そのバンド以外で仕事をしたことはない。 …