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なにかあり/とくになし

ア・スマイル・アンド・ア・リボン その1

これから書く話は
2012年の1月17日と18日の2日間、
マンハッタンのジャズ・クラブ、
イリジウムNRBQの2デイズを見に行ったときのこと。


もともと
ぼくがこのライヴを見に行く予定を立てたのは
ジェイク&ザ・レスト・オブ・ジュエルズの名義で
素晴らしいソロ・アルバムを発表した
ニューヨーク・グッドタイム・ミュージックの生き証人
ジェイク・ジェイコブスがNRBQをバックに歌うのを
見ておきたかったからだった。


ところが
その直前の1月6日
NRBQで30年以上にわたってドラムを叩き
デブで巨体で愛くるしいキャラクターと
博学という言葉になんか収まりきらない愛情で
音楽に接し
レコードを収集してきたトム・アルドリーノが
亡くなってしまった。


単に尊敬すべきミュージシャンという以上のつきあいを
ぼくはしてきたという自覚があり
ひどく動揺した。


その動揺は
その数日後から
NRBQとして10日間ほどのツアーを始めることにしていた
テリー・アダムスにとってもおなじこと。


いや
おなじことだなんて言うのは
おこがましい。


悼むとか
偲ぶとか
そういうこぎれいな言葉ではまとめようもない
荒れ狂う感情の波と
重くてつめたい悲しみに
一緒に生きたぶんだけ
ひとはさらされる。


それでも
彼らはロードに出ることを決めた。


無二の盟友の死。
言葉にするとたったの七文字しかないが、
実際には、その喪失感ははかりしれない。


トムの愛した音楽が鳴っていることが
たむけになると思えるし
仕事をすることで
すこしでも気が晴れるってこともあるだろう。


ぼくたちもそれを願う。
それに
しょんぼりとしたNRBQなんて
間違ってもぼくは見たくない!


そう思いながら
ブロードウェイから地下へと
イリジウムの階段を降りた。


すこし長くなるかもしれないけど
この2日間でぼくが見たこと
だれかと話したこと
感じたことを
書いていきます。


無二の友人の追悼というより
愛すべき数寄者たちの音楽と人生をめぐる
群像劇みたいなものに仕上げられたらしあわせなんだけど。(つづく)