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なにかあり/とくになし

「ハーモニカブルース」が聞こえる

高浜寛「四谷区花園町」と
山田参助あれよ星屑」を
時間が空いたときに
たびたび読み返している。



好きな漫画を何度も読み返すということは
あるけれど
2冊の、まったく別人が描いた漫画を
同時に何回も読み返すというパターンは、そうはない。


めちゃめちゃ簡単にいうと
「四谷区花園町」は
第二次世界大戦直前の東京を舞台に
エロ雑誌の編集発行に奔走する男たち(と純愛)の話。
「あれよ参助」は
その戦争が終わって焼け跡になった東京で再会し
煤けた街を生き抜こうとする男たちの話。


奇しくも20世紀に日本を翻弄した
ひとつの大きな戦争をまたぐように
この2冊の漫画は存在している。


さらに不思議なことには
もう何十年も前の話を書いているはずなのに
今この時代とそんなにかけ離れていないような気もする。


今が「戦後」なのか「戦前」なのか
何となくわからなくなっているからかもしれないし、
この2作に通底する
時代のおおきな潮流にどうしようもなく翻弄されても
個人として抗いながら生きたいと願う(願った)ひとたちのドラマににじむ
片想いのような不器用さ、一途さ、人間臭さが
画から物語からそのまなざしから
どうしようもなくつーんと胸にくるからかもしれない。


「あれよ参助」の
闇市でレコードが流れるエピソードが好きだ。


作者はあえて曲名を記していないが
その画と物語から
ぼくにはこの歌がすぐに聞こえた。


そして「あれよ参助」を読み終えると
また「四谷区花園町」を読み返してる。



小沢昭一「ハーモニカブルース」