飛べ、新スポーツ
●「突然だけど、21世紀も6年目が終わるじゃない?」
▲「はあはあ」
●「今年も誕生しなかったね、新しいスポーツ」
▲「スポーツ? あの体を動かして、大会とかやったりするやつ?」
●「世界中にいったいどれくらいスポーツの種類ってあるのか知らないけどさ、
たぶん、もうイチからルールとか考えてやるのは無理だと思うわけ」
▲「そんなもんですかね」
●「でも、おれがいっちょう考えてみたのよ。新スポーツを」
▲「そりゃまたしんぞうですね」
●「なんだい? “しんぞう”って?」
▲「杉浦茂先生がよく使ってたんですけどね。
度胸があるね、とかいう意味かな」
●「(無視して)おれが考えたスポーツ、
それはトランポリンとベースボールの合体、
名付けて〈トランボール〉!」
▲「おお、なんとそのままなネーミング」
●「簡単に言うとな、野球の野手9人とバッターボックス、
そこに全部一人用のトランポリンがあるのよ」
▲「もう先見えたけど、まあ聞きましょ(鼻をほじくる)」
●「ルールは野球とほとんど一緒なんだが、
要するに、いかなるプレイをするときも地上に足が着いてたらダメ。
球投げるときも、打つときも、取るときも、
ぴょーんと飛んでないといけない」
▲「審判も飛んでないといけないすね」
●「お! そうだね。審判も飛んでいる、と(メモを取る)」
▲「ヒット打ったら、どうするんです?」
●「ホームから一塁、一塁から二塁、二塁から三塁、三塁からホーム、
全部上空をロープでつなぐのよ。
バッターはそこを猿渡りする」
▲「そんな無茶な」
●「おまえ『SASUKE』って番組見たことねえのか?
結構いるってよ、全国探せば。それぐらい出来るやつ。
こんだけ飛んだり跳ねたりしたら、おーもしれーぞー」
▲「しかし、それだけやるんだったら、お客さんも
全員スタンドでぴょんぴょん飛んでるんでしょうね」
●「は! そこは盲点だった。
そりゃいいね。お客さんも飛ぶ、と(再びメモ)
さいたまジャンピング・アリーナ作らないと……」
この会話、オチも飛んでいる。
吾妻光良の名著「ブルース飲むバカ 歌うバカ」
増補改訂版が出ていたので、買うしかなかった。