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なにかあり/とくになし

ここは渋谷じゃない

日曜の夜はいつもの早売りポイントへ。


渋谷のど真ん中にあるこのスタンド(場所は秘す)。
おばちゃんに無言で小銭を渡し、
ビッグコミック・スピリッツ」を受け取る。


ぼくは、このおばちゃんには鍛えられた。
怒られたこと数回。にらまれたこと多数。
微笑まれたこと0回。


お札は決して出さないこと。
最初は5千円で怒られ、
次は千円で怒られ、
今は5百円玉すら出さないようにしている。


台の上に早売り本が出てないときは
横に回ってこっそり買うこと。
当局の監視の目が光っているのだ。


今日も今日とて
おばちゃんとハードボイルドな取引を終える。
それを見ていたフジセ(ハイファイのバイト)が言った。


「無言でお金の受け渡しするの、やめてくださいよ」


何でだよ。


「何だか、ここは渋谷じゃない感じです」


まるでどこかの闇の取引みたいな無言の符牒は、
そう見えても仕方ない。


確かに、この感じは渋谷じゃない。
いや、本当は不良と遊び人しかいない暗い街だったという
遠い昔の渋谷が残っている“点”なのかもしれないよ。