「孤独のグルメ」に捧ぐ
「SPA!」で
久住昌之(原作)+谷口ジロー(画)コンビの
名作漫画「孤独のグルメ」が
10年ぶりに再開されたという噂を聞いた。
再開なのか、
特別企画なのか、
まだ確かめていないが、
うれしい話じゃないか。
誰にだって「孤独のグルメ」はある。
みんながみんな
「美味しんぼ」みたいに
わいわいがやがや集まって飯を食ったり、
問題を解決したりするわけではないのだ。
20代の終わりに無職になった。
結婚して一年目の夏だった。
最近とみに悪名高い派遣会社グ●ドウ●ルに登録して
武蔵境にあった椅子工場コト●キに
日雇いで通ったりもしていたが、
その工場は数年前に閉鎖されて、今はもうない。
その工場のすぐそばに
東京の油そばの発祥と言われる名店があり、
よく行列が出来ていた。
その店より数百メートル離れた裏通りに
もっとしがない中華料理屋さんがもう一軒あって、
そこでも油そばを作っていた。
個人的に言えば、
自分の舌にはその“亜流”の方が合っていて、
昼休みに、ひとりでテクテクと通った。
炒飯もうまかったと思う。
ただし、10年経ったぼくの胃袋には
油が重い予感が濃厚な感じがする。
流行ってはいなかったけれど、
亜細亜大学から近かったこともあり、
学生さんには愛されていたような記憶がある。
亜大出身者の知り合いに
その店のことを訊いてみようと思うのだが、
いつも忘れてしまう。
それを言うなら、
多摩川競艇場に行った帰りに
武蔵境で乗り換えるとき、
瞬間的に「行ってみようか」などと魔が差すこともあるのだが、
それも果たせずにいる。
それほどの至福感を抱えて
多摩川競艇場を後にする機会が少ないからだ。
バクチにも、
出来れば人生にだって勝ってから行きたい。
それこそが魂の凱旋というものだろう。