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なにかあり/とくになし

またかげろうにもどったひと

いちかたいとしまささんから
郵便物が届いていて
封を開けたら
待ちわびたファースト・アルバムの
サンプルCDが入っていた。


いちかたいとしまさという
いい年をした
風変わりな名前のシンガー・ソングライター
大滝詠一そっくりの声でおもしろいと
騒ぎ立てた何人かのうちの
ひとりがぼくだった。


実際には
いちかたいさんのおもしろさというのは
大滝ドッペルゲンガー的な妙味ではなく、
氏のつくる曲のふわりとした風合いや陰影、
奇妙な若々しさ(ロックっぽさ)にも由来していて、
大滝さんも特殊かもしれないが
いちかたいとしまさだって独立して特殊なのだと
のちには思うようになっていた。


それにしては、
待たすとこだけは
御大と似ていたと言うべきか。


いちかたいさんを知ってから
5年が経っていた。


そのままジャケットになるのかわからないが
サンプルCDには
かげろうのようにうすらぼけた
いちかたいさんのポートレートがあしらわれている。


ゆらゆらとした
正体不明感を取り戻して
かえって衝撃はいっそうリアルに呼び戻される。


アルバム・タイトルは
もう何年も前から決まっていたとおり
「ホーム・グロウン」。


来月発売になるそう。


いちかたいさんの取り持ちで
ただ一回だけ故・黒沢進さんとお酒をご一緒したことも
忘れられない。


追記。


うれしい報せがあって
お祝いをした。


桜が咲いたら卒業という
風物詩めいた物言いは
伊達じゃなかった。