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なにかあり/とくになし

じれったさの先にあるもの

小山宙哉宇宙兄弟」(モーニングKC)を
最初はおもしろく思っていなかった。


この漫画家の前作で
「モーニング」に顔を出していた「ハルジャン」や「ジジジイ」も
おもしろそうなテーマなのに
ちょっとじれったいようなところがあった。


突き抜けそうなところまで行っておいて
ふみとどまってしまう、という感じか。


宇宙兄弟」も
出だしは案の定、じれったかった。


近未来、
宇宙飛行士の弟と
宇宙飛行士志望だったが
落ちこぼれて会社員に甘んじていた兄の物語。


鳥の巣頭の兄が主人公。
中途半端な人生を送ってきた彼が
一念発起して宇宙飛行士を目指すという流れになっている。


これ、大泉洋でドラマ化狙ってるんじゃないだろうな、
という邪推は置いといて、
物語が序盤を終えたあたりから、
この兄の中途半端さから生まれる覚悟がスパイスになり
話がおもしろくなりはじめた。


中途半端という精神の状態はありふれたものだが
そこから導き出される展開が特殊なのだ。
だから、読者は
まるで現実みたいに物語につかまる。


煮え切らないもの
割り切れないものからも
興奮は生まれるということを
きちんと描ききるのが
このひとはうまいのかもしれない。


それが“読ませる”ということなんだろう。