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なにかあり/とくになし

いなりはダメでも、いならなら

三文字食材の連鎖が
ことのほか好評のようで
北から南から便りが届く。


今度は
たにし
ですって。


あの
しょうゆか何かで煮たのを
つまようじで
ぽくっと取り出すやつなら
きっと食べたことがあるはず。


ああ、
もうひとつ苦手な三文字があった。


いなり
だ!


でも、ちょっと待って。


いなりは苦手だが
いならはOK!


いならとは
女性シンガーソングライター、イナラ・ジョージのこと。


今年の初めに
プロモーションで来日した彼女のミニ・ライヴを見て(2008年2月22日)、
そのときに次のソロ作を
ヴァン・ダイク・パークスの全面プロデュースで制作したという話を聞き、
楽しみに待っていた。


その新作
「アン・インヴィテーション」をようやく手にする。


驚くなかれ、
全面プロデュースという言葉にいつわりはなく
全曲、ヴァン・ダイクのアレンジと指揮、
コンマスはシド・ペイジ(ホット・リックス!)による
ストリングス・オーケストラと
彼女との対決になっていたのだ。


さらにいうと、
音源のマスタリングは
ブルース・ボトニック。


細野晴臣トリビュートでの「Yellow Magic Carnival」、
ジョン・C・ライリーの映画「ウォーク・ハード」での
マジカルな傑作「ブラック・シープ」、
そしてこのイナラとの共同作業が
ヴァン・ダイクの
21世紀の三部作のように思えた。


高名ミュージシャンの娘という点で
クレア・マルダーとも通じ合う部分がある。
今のところ、ぼくはふたりとも好きだ。


しいて言えば、
物心つく前に父ローウェルを亡くしたイナラには
日本でいえばしょこたんみたいな
血脈の幻影からの自由奔放さがあるかもしれない。


東海岸に住むクレアは
最大限の敬意と憧れを持って
ヴァン・ダイクを一曲だけ客人として迎え、
ピアノを一台用意した。


西海岸に住むイナラは
「ご自由にどうぞ」と
白い譜面を開いてわたした。


デートの方法としては
イナラの方が大胆だった。


それにしてもヴァン・ダイク、
今までキャラになかった
“もてる男”になっているんだね。