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なにかあり/とくになし

種を植える

「ネタって言葉があるよね」
「ありますね」
「あれは最初は寿司の世界から出て来た言葉らしい」
「そうですか」
「具を指す”種”ってのが語源でね」
「それを逆さにして“ネタ”」
「そう、ズージャのドンバみたいな」
「意味がわからないんですが」
「逆さ言葉が業界の隠語になるって伝統よ」
「今じゃ業界用語でも何でもないぐらい一般的ですね」
「ま、レコードの世界でもネタものって言うぐらいだから」
「あれですね、ネタのもとが種だったら、植えたら何か出てきたりして」
「(小声になって)いやそれがさ、おれも考えてたとこ」
「は?」
「だからさ、レコードの種」
「はあ?」
「わかんない?」
「いや、わかりますよ。わかりますけど、わかんない」
「レコードをさ、埋めたら木が生えてきて、成るの。レコードが」
「どうやって?」
「いや、実が成って、パカンと割れてレコードがポコンと落ちてくんの」
「そうじゃなくて、どういう原理で?」
「それは考えてよ、科学者が」
「いや、考えてよて」
「新種のフルーツとか野菜みたいに、掛け合わせたら、すごいの出来たりして」
「掛け合わせ……」
「アーチー・ベルの『タイトゥン・アップ』とニール・ヤング&クレイジーホースとかさ」
「聴いてみたいような、どうでもいいような……」
「いや、絶対聴いてみたいっしょ! クレイジーホースの『タイトゥン・アップ』!」
「…………」
「肥料も大事だね。愛情が足りんと、間違った部分が掛け合わされる」
「たとえば……?」
「アーチー・ベルの『シナモン・ガール』になる」
「それはまたへなへなでしょうね」
「あ、ちゃんとオリジナル盤を埋めないとダメだよ」
「再発だと、実も安い感じなんですか」
「ちゃんと身を切る思いをしないと、いいものなんか出来ないってことよ」
「そこだけは一理ありますね。そこだけは」
「これが実現すれば毎年夢のレコードが生まれるぞ」
「はいはい」
「今年は不作だ、なんて年もあったり」
「はいはい」
「某DJがアメリカの農場買って大量生産目指したり」
「はいはい」
「やっぱり土も大事だろってジャマイカまで土仕入れに行ったり」
「はいはいはいはい」
「何とか農場直送盤、大量入荷! なんつって!」
「この話まだ続けるんですか?」
「うん、下手したら明日も続くかもよ」
「ネタないんですね」
「何言ってんの? 種だらけだよ」


以下、もしかして未完(種だけにミカン……)!


ジョージ・フレデリックヘンデルさん(1685年)
ジョニー・ウィンターさん(1944年)
お誕生日おめでとうございまーす。