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なにかあり/とくになし

音楽と恋愛

「トルバドール・リユニオン」と銘打って
春の日本公演からはじまり
アメリカ全土をくまなくめぐってきた
キャロル・キングジェームス・テイラーのツアーの
最終日を運良く見ることが出来た。


場所は
カリフォルニアのアナハイム
ホッケー・チームの本拠地として使われる
ホンダ・センターは
日本で言えば横浜アリーナ・サイズといったところか。


日本公演は見逃してしまったし、
今さらでしょうよと強がってみせる気分もなくはなかったけれど、
行けるとなれば
そらもうほいほいと。


結果的に言って
完璧な名曲のオンパレードという以上の
エモーショナルなシーンが
演者にも音楽にも会場にも宿っていて
たまらない記憶を残す一夜になった。


68歳のキャロルと
62歳のジェームスに
今さら焼け木杭(ぼっくい)に火が点くなんてことはないし、
それこそお互いの肩にもたれあうシーンですら
手だれなプロフェッショナリズムの
現れのひとつかもしれないとも思うのだけれど、
それでもひとはこの光景に胸を焦がすだろう。


おいおい彼女まだおれにひょっとして気があるんじゃないの?


どうしてあたしはこのひとがあんなに好きだったのかしら?


みたいなさ。


この名曲にはこういういわれがあってとか
チャートで何位まであがってとかいうことだけでは説明のつかない
普遍的で
感じやすい心の動きの
それも下心の動きの現在過去未来を
揺さぶるフェロモンがあるのだ。


そしてそのフェロモンは
たとえ舞台の上だけだとしても
彼と彼女が恋愛をしているから生まれるものだろう。


ラストナンバーは
日本では「ロコモーション」だったそうだが
ツアー・ファイナルを締めくくったのは
お祭り騒ぎではなくて
ふたりだけの「ユー・キャン・クローズ・ユア・アイズ」だった。


最初から決まっていた演出だったとしても
こたえられない高ぶりがあった。
まいった。