mrbq

なにかあり/とくになし

続・横浜黄金町「試聴室 その2」にて

横浜黄金町の「試聴室 その2」で驚いたこと。


カウンターのなかで働いていたのが
三沢洋紀さんだったこと。


すでにこちらで働いて結構になると聞いた。


その三沢さんが
CD-Rの盤面にマジックで何やら書いている。


「真夜中フォークミュージック」


象のイラストが描かれた
手作りのジャケットに
三沢さんが収めていく。


どんなものなのかわからないが
たぶん三沢さんが歌っているんだろうし、
どうやら売り物らしいので
「それください」と言ってみた。


全10曲で800円。


「ぼくとテニスコーツの植野(隆司)くんのデュオでやってるんです」


その夜は
空きっ腹に飲んだビールと
帰りに京急鈍行列車の揺れが効いて
家にたどり着いたときはへろへろだったので
結局
CDを聴いたのは
真夜中どころか
翌日の真昼になってしまった。


しかし
CDをかけたらすぐに
部屋のなかが
夜中3時くらいの
あのなつかしい
何をするでもなくだらだらと
レコード聴いたり
バカ話をしたり
気の抜けたおならをしたりして
ゲラゲラと笑い合えた
あのゆらゆらとした時間帯になってしまった。


妄想の午前3時に
足を投げ出してぼんやりと座るぼくの前で
ふたりの男が
するっと口から出た本音や
やり場のない想いを
上品なナンセンスでくるんで
どこかで聴いたことのあるような歌にしている。


これはどういう歌なんですかと
妄想のぼくが問うと
「かなりの天国気分〜」と
妄想のふたりは歌で答えた。


「コンビニバイトは時給も安い 750円
 ゴルフの事しか頭にない やとわれ店長」


とある曲の
その一節が
とりあえずもう
からしばらく離れない。


これは“アシッド”・フォークではなく
酸っぱさや苦さもはらむ日本語の“酸”なのかも。
そう言いたくなるほど
耳にじりじりと焼き付く日本語がいい。


「真夜中フォークミュージック」のCDは
黄金町の「試聴室 その2」で売っている。
スパンピナート・ブラザーズの公演の最中にも
三沢さんはしれっとCDを売っていた。


ぼくはそれを買った。


800円で体験出来る
真昼の真夜中だった。
ぼくもへたな声を重ねてみたくなった。