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なにかあり/とくになし

トム・アルドリーノのプライベート・レッスン

今年最初のブログです。


今日、1月6日は
ぼくのたいせつな友人であり
音楽とつきあうことの先生でもあった
NRBQのドラマー、トム・アルドリーノが亡くなってから
ちょうど一年目にあたります。


アメリ東海岸とは時差があるので
実際には
ぼくが報せを受けたのは日本時間では7日のお昼でした。


その夜、
高円寺のペンギンハウスで
ジンタの再結成ライヴを見て、
翌日は
下北沢の440で
山本精一+鴨田潤の弾き語りツーマンを見て
真夜中にカラオケに行って
小坂忠の(アレンジはスカパラ小沢健二の)「しらけちまうぜ」を歌いました。


結構あたまが真っ白だったはずなんですが
よく覚えてますね。
忘れられない時間だったからかもしれません。


もう一年と言われても
まだ実感ないです。


故人をしのんで、という言い方はあまり好きじゃないですが
トムのことを思い出すには
彼が好きだった曲のことを
いくつか書き残しておくのがいいんじゃないかと考えました。


彼が好きだった曲は星の数ほどあるので
ここに紹介するのは
あくまでトムとのあいだで話題にしたり
彼に直接教えてもらった曲の、ほんのいくつかを
松永良平の責任で個人的にセレクトした、ということにします。


1
The Avalanches / Ski Surfin'


1999年、トムからもらった最初のカセット・テープに入っていました。
そのカセットに入っている曲はどれもすごくて
ずいぶんあちこちを探しまわった記憶があります。


2
ピチカート・ファイヴ / 銀ちゃんのラブレター


21世紀に入ると、カセットからCD-Rに変わりました。
骨張った日本語でこの曲名が書いてあるのをみたとき
ぶるっと震えるほど感動したのを覚えてます。


3
Pink Floyd / San Tropez


これは正確にいうとぼくのチョイスでトムのではないです。
一緒に車に乗っているときにぼくの作ったCD-Rをかけていて
この曲をきいたトムが
「おー、これ昔大好きだった曲だよー、たぶん30年振りにきいた。ありがとー」
と言って盛り上がったことを今でも思い出すので。


4
doopees / love songs


トムが好きな日本人アーティストはたくさんいましたが
その究極のひとつがdoopeesだったと思うのです。
ヤン富田さんのライヴで復活してときどき歌っているよ」と教えたら
「見たいけど、もし見たら興奮して死んでしまうかもしれない」とよく言ってました。
目が笑ってなかったので、あれは本気だったと思います。


5
Dennis Wilson / It's Trying To Say


これもカセット時代に教わった曲でした。
デニスでは
ビーチ・ボーイズの「イン・ザ・バック・オブ・マイ・マインド」が好きだという話でも
めちゃくちゃ盛り上がった記憶があります。


6
Jack Nitzche / Lower California


これは00年代の後半に教わりました。
今この曲をきくと
南カリフォルニアにトムが生まれていたらどうだっただろうと
妄想してしまうことがあります。


7
TUCKER / Don't Let Me Be Lonely Tonight


これは曲が好き、ではなく、タッカーそのひとのことです。
タッカーもトムの「ブレイン・ロック」をすごく愛してくれたので
じつは相思相愛でした。
ふたりを出会わせることが出来なかったのは心残りに思うことのひとつです。
タッカーはカクバリズムの10周年ZINEのアンケートでも
トムに触れてくれてました。


8
Jimmy Wisner / Choppin' Around


これも初期のカセットに入ってた曲です。
B面の「Juliet's Theme」もステキで、それも別のカセットに入ってたはずです。


9
Nora Guthrie / Emily's Illness


Arf! Arf!から出ていたコンピ「Only In America Vol.2」(2003年)に収録されたのが
彼女のこの唯一のシングルが世界的に知られるきっかけだったと思いますが
実はその音源を提供していたのがトムでした。
偉いとか早いとかを言いたいわけじゃなく
そのことはちゃんと知られておいていいんじゃないかと思って。


10
Hurricane Smith / Many Happy Returns


ライヴでは「オウ・ベイブ」を歌うときがありましたけど
ハリケーン・スミスで一番好きだったのはこの曲だったと思います。
一番最初にもらったカセットのタイトルでもありました。


トムと音楽の話をすることは
ありとあらゆる面で
ぼくが人生で受けた最良の授業でした。