奇襲! 緑の怪物!
ブロッコリーの話をしよう。
食べ物の好き嫌いが結構多いのだが、
その中でも最上位に来るのが、このグリーン・モンスター。
たぶん、こいつらは異界からの侵略者で、
地球征服のために攻め込んできたのだが、
残念ながら重力や環境の影響で動きが極端にのろく、
しかも、地球人にとっては食べると美味しいため(ぼくはそうは思わない)、ひょいぱくと食い殺される。
だから、侵略の野望をなかなか果たせずにいる。
つまり、ぼくは、やつらの野望と敵対心に気がついているのだ。
常日頃から食卓に攻めてこないよう、目を光らせている。
たまに、ツマが撃退(食事)しているが、ぼくは危険には近寄らない。
だが、レコードの買い付けでアメリカに行くと、ときに予期せぬ戦いを強いられる。
“奇襲”である。
あるときは、和食屋(見よう見まね風)で“ヤキソバ”を頼んだら、
何とブロッコリーの天ぷらが乗っかって出てきたときがあって、
そのときは即死。
別の街で、今度は中華料理屋に入り、
メニューを真剣に見つめて、これなら大丈夫だろと豚肉の炒め物を頼んだら、
ボーイが向こうから緑色の皿を持ってきて目の前で止まった。
え……?
なんだ、このブロッコリー祭は? 豚肉が隠れて見えない。
再び即死。
それでも何とか密林をかき分けて豚肉を食べる。
ボーイが、山と残った皿を見て、けげんそうにぼくを見て言う。
「フィニッシュド(もう終わり)?」
「ごめん、アスパラガス食べられないんだ」
「はあ? これブロッコリーだよ?」
「ホント、ごめんなさい!」
ボーイは、頭にハテナ・マークをいっぱい浮かべながら、すたすたとその場を去って行った。
どうも、自分ではブロッコリーと言っているつもりが、
気が動転して、アスパラガスとしゃべっていたらしい(同行者の証言によると)。
言語中枢まで冒されるとは!
おそるべし、ブロッコリー!
今日も地球を守るための、小さな戦い(0勝2敗)は続く。
苦手なものの話の口直しに、
最後に好きなものの名前を挙げておこう。
宇仁田ゆみ!
単行本は全部持ってます。