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なにかあり/とくになし

ゴムの底のくつ

風呂の中、あるいは、布団の中で、
原稿の“出だし”を考える。


出だしは、原稿の8割を占める、
と言い切るのはオーバーかもしれないし、
他人様のことはわからないけど、
それぐらい大切だ。


いたずらにキャッチーであればいいというものでもない。
地味に始めたっていいのだ。
イントロがカウントから入るのか、オーケストラか、ギターのアルペジオか、
それともいきなり歌から入るか、
音楽で言えばそういうことで、それと同じくらい重要だってこと。


だが、ときどき、良いイントロが浮かんだのに、
体力が持たず、
ずぶずぶと酩酊、睡眠に入ってしまう(風呂の中でもだ)。


そういうときは、夢うつつで原稿の続きを書いているのだ。
目が醒めたらほとんど何も覚えていないのに、
夢の中では、もう3000字もノリノリで書いていたりする。


目が醒めて、何もない。
ホント、そう。
よくあること。
夢の断片を何とかつなぎとめて、のろのろと書き始める。


レイ・ブラッドベリという幻想作家がいて、
大ファンではないけれど、ときどき読んでいる。
このひとの短篇を読んでいると、
夢で無くした文章を思い出させてくれる感じがする。


サウンド・オブ・サンダー」というSF映画が、
彼の短篇「いかづちの音」が原作だということで、
それを収録した短篇集「太陽の黄金の林檎」が最近、本屋に出回っている。


その中にある「歩行者」という短篇がいい。
内容は書かないが、主人公はゴムの底のくつを履いて、ひとりで歩いている。


シンガーソングライター、いちかたいとしまさの歌う、
「ゴムの底のくつ」の元ネタはたぶん、これだろう。


そう言えば、トッド・ラングレンはあるインタビューに答えて、
「自分の曲はすべて夢の中で作る(出来ている)」と言っている。
何となく信用ならない。
だが、信用ならないことを言うトッド・ラングレンは信用出来る。
そんな感じである。