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なにかあり/とくになし

吉川忠英、鼻むずむず

NRBQの蔵出しライヴ集「Froggy's Favorites Volume 1」(2CD)発売。
ライナーを図に乗って約8000字ほど書きました。
ハイファイ・レコード・ストアにて販売中。


夜、大学の同級生と10数年ぶりに会う。
場所は吉祥寺。
待ち合わせは書店「ルーエ」。
大学時代の知り合い、それもクラスメートと会うなんてことは、
自分としては稀に見るケース。
この約束でさえ、1年半がかりくらいの実現だったような気がする。


彼と一緒に、
矢野顕子の“引退”ライヴというのを見に行ったことがある。
東京厚生年金会館
アルバム「グッド・イーヴニング・トウキョウ」になったライヴだから、
89年? 88年の暮れだったかな?


当時、彼女は子育てに専念するとかいう理由で、
引退を公言していた(あっさり破られるのだが)。


そのときのメンバーは坂本龍一高橋幸宏小原礼大村憲司吉川忠英……。


「え、吉川忠英いたっけ?」
と彼が言う。


いたいた。
やたらアコースティック・ギターがうまかったし、
そうそうたるメンバーの放つオーラに負けない、
“シャイないぶし銀”の記憶が残っている。


「そうか。ちょっと前に夏川りみを小さなハコで見たときのギターが、吉川さんだったんだよねえ」


あれ?
そう言えば、吉祥寺に向かう電車の中で、
吉川忠英の話をしたばっかりだな。
おっと、その話はここですることじゃない、と口ごもる。


しかし、一日にふたりと吉川忠英の話をするなんて。
それもわずか二、三時間の間に、
まったく異なるシチュエーションで。
なんだか不思議な感じがした。
吉川さん、鼻がむずむずしてはいまいか。


ぼくはずっとビール。
彼は途中からどこかの焼酎をロックで呑んでいた。