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なにかあり/とくになし

ブラック永

永六輔の語りおろし自伝「生き方、六輔の。」(構成:矢崎泰久新潮文庫)を読む。
このタイトル、当然「永です」という永さん独特の快活な口調で読むのである。
「。」が付いているところが姓名判断の結果のようでもあるが、
それはうがちすぎ。


テレビ創世記にあって、永さんのスタンスというのは独特だ。
以前に読んだ前田武彦自伝でも、他人に寄りかからない永さんの生き方は一目を置かれていた。
永さんの話で、若き日の野坂が出てくるくだりがチラチラとあって、
その悪辣、ハタ迷惑ぶりが面白い。
まだ第二章までしか読んでないので、教えない。
まあ、読んでも教えないじゃないか、と言われればそうです。


確か、ずいぶん前に「永六輔 男の世界」とかいうタイトルのレコードを買った。
「こんにちは 赤ちゃん」の自作者ヴァージョンが収録されているのだが、
父親の視点に歌詞が書き換えられていて、かわいらしさゼロ。


永さんの歌声は語り口調とは違って、朗々とした迫力がある。
それが予期せぬ誤算という感じなのだ。
もっとも、このひとの話には、
唐突に「あなた死にますよ」と言われてもしょうがないような決意と覚悟があるので、
誤算ではなく真実なのだという気もする。
永さんのもっともブラックな部分が歌に濃縮されているのだろう。


あのLP、なんだかこわくて聴けなくなって、
聴いてる途中であわてて棚にしまった記憶がある。
まだ部屋のどこかにはあるはずだが、絶対探さないぞ。