溢れでる写真
リー・フリードランダーの写真集「American Musicians」をめくる。
この高名な写真家に用があるのは、
50年代後半から60年代のアトランティック・レコードで
ジャケット写真を数多く手がけているから。
ローランド・カークの「溢れでる涙」のアウトテイクなんかあって、
こっちの気持ちが溢れでちゃう。
溢れでる写真。
表紙のアレサ・フランクリンを見てそんな“邦題”を思った。
彼はビリー・ホリデイの葬式もフレームに収めている。
素敵なレコード・ジャケットを見ると、ぼくたちの心は反応する。
そのとき、そのジャケットの向こう側にも、
被写体と写真家たちの心の動きがちゃんとあり、
それが絡まり合って物語となっていることが感じられたら、どんなにいいだろう。
ちょっと横向いて。カシャ。
歌ってみて。カシャ。
そこのピアノ弾いてみて。カシャ。
「それはイヤ」。カシャ。
灯り消してみて。カシャ。
いや、点けてみて。カシャ。
そんなあれこれ想像するだけで、
ご飯を何杯でもおかわりできる感じ。
アトランティック・レコードの表紙を飾った写真たちの、
裏面がたっぷり収まった一冊。
録音面で同社の裏話がたっぷり詰まったトム・ダウドの映画を見たひとは、
是非この写真集の方も手に取ってみては?
ノーマン・シーフも素晴らしいけど、
ぼくの心情はこちらに傾いている。
めずらしく推薦などしてみた。