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なにかあり/とくになし

SANKAIKI

朝から羽田空港
2年前に亡くなった従姉の三回忌のために八代へ。
親戚がおおぜい集まった。


彼女が亡くなった9月14日はぼくのツマの誕生日。
そして、ぼくの母親の誕生日でもある。
だから、ずっと忘れずにいられる。
まるで、お悔やみのような、おめでとうのような。


強気で“いけず”な大阪娘だった。
亡くなる前の数年は母方の実家のある熊本で過ごした。


彼女が好きだった冬目景の「イエスタデイをうたって」の4巻をお供えする。
彼女が読むことができなかった話の続きが載っている。


いいかげん酔っ払ってしまったころ、
2階にある彼女の部屋に行った。
亡くなったその日のままになっている部屋は足の踏み場もない。


「読書家」などというありきたりの言葉では済まされない。
3つの部屋が本という本で埋め尽くされているからだ。
3つ目の部屋は、本が邪魔して扉が半開きしかしないため、
大人の体格では入ることができない。
やせていた彼女は、自分のからだをねじこむようにそこに入っていたのだろう。


中世〜近世日本史についての学術書幻想小説、実録文学、
少女漫画、少年漫画、エッセイ、写真集などなど。
晩年、病気がちだった彼女は、
自分のいる世界から、この世界のすべてを読み尽くそうとした。
この部屋そのものが彼女の伝記だと思えて、くらくらする。
そして泣けてくる。


一角にほんの小さなCDラックがあって、
蔵書の膨大さとは対照的に、十数枚のCDが置いてある。
しかし、そこにもこだわりを抱えた彼女らしさが見て取れた。
バレエ音楽と一緒にビートルズ、チープ・トリック、
そして初期の10CCが並んでいる。


10CCが好きだったんだ。それも初期の。
それは、“いけず”だった彼女らしくて、
三回忌に、ぼくはまた彼女が好きになったのだった。