本年もご愛顧ありがとうございました、ではでは第1位

去年の大晦日はツマと弟と横浜にいた。
今年は同じメンツで、ウチ年越し。

弟が来るまでソワソワと年賀状の宛名書きをしたり、
年内最後の原稿仕事を進めたり。
その仕事は、あるインタビューのテープ起こし。
ものすごく頭のいい人が相手で、
身が清まる。背筋がシャンとなる。
ただし、肝も縮む。あそこも縮む。

縮んだ肝を何とか奮い立たせ、
かたちがついたところで年越しうどん。
ハートランドからマッコルリで乾杯。

本年もご愛顧ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

では、いよいよ今年の発見第1位。

この話はちょいと長い。

ぼくの働いてるハイファイ・レコード・ストアでは
年に数回、アメリカにレコードの買付に出かける。
その間も、このブログは続行されているのだが、
買付は企業秘密の部類に属するので、
実はその話題は一切出てこない。

このページをよく見ていらっしゃる方の中には、
話題の微妙な変化でそれを察知するという人もいるらしい。
どうぞ、おヒマがあったら、
いつどの辺にそういう変化があるか探してみてください。

で、話は買付に戻る。
とある街のショッピングモール。
同行のボスと分かれて、
一時間ほど買い物にいそしむ。

ボスはブルックス・ブラザースのファンなので、
するすると吸い込まれるようにその中へ。

ぼくはふらふらとしているうちに、
ちょうど着替えの靴下が切れたことを思い出したので、
たまたま目の前にあったカジュアル系のショップへ立ち寄った。

すると、何だか気になる柄のトランクス・パンツを発見。
これは自分にもいいし、誰かの土産にもなるな。
中でも目を惹いたのは、
バナナを持った猿がサンタの格好でおどけている柄模様。
申年生まれは猿関係にはさからえない。
靴下のことはすっかり忘れて、
急遽、猿パンを購入することにした。

その会計で並んでいるときのことだ。
ぐいっと下腹部に違和感。

マズイな……。

クレジットカードを出しながら、ぐいぐいっと第二波。

やばい。

作り笑顔を浮かべて、さっさと店を立ち去ると、
一路トイレへ。
急げ急げ。
アルビン・トフラー第三の波が来たら……決壊だ！

ようやく発見、レストルームのサイン。
目標到達まで、あと数十メートル。
ここで来た！　第三の波。
魂の非常ベル。いや、サイレン。
「非常事態発生！　非常事態発生！」
もし、決壊あらば、それは異国での死。
ズバリ客死だ。

入室。空き部屋発見。開錠。侵入。
着席用意。ベルトを外せ。
よし間に合う！　と思ったその瞬間の出来事だった。

（この間の詳述は回避させていただきます）

あーあ。客死。
被害は小さいとは言え、運（ウン）の尽き。
中年日本人男性、呆然と便座に座り込む。

やっちゃった……。

そのとき、ふと脇を見た。
お、ショッピングバッグ。
袋に印刷された若い男女が
何やら微笑みかけている。

そうだ、さっき買い物したんだ、おれ。
なに買ったんだっけ？

ああ。

お猿さん。

その間、心の真空数秒。
やることは決まった。

旅の恥はかき捨て。
なら、旅のパンツも履き捨てだろ！

まるでムエタイ王者のようにトランクスを履き、
すっきりした気持ちでぼくはトイレを出て行った。
早足で。

あとには幸運の付いたパンツを残しておいたから。

そして、待ち合わせ場所で待ちぼうけをくらっている
ボスのもとへにこやかに帰っていったのだった。

というわけで、今年の発見第1位は、
ぼくのピンチを異国で救ってくれた
お猿のトランクスにさしあげたい。

結論。
自分の干支はなめたもんじゃない。