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なにかあり/とくになし

あけまして太郎、聖子

あけましておめでとうございます。


もう十数年も昔になるけれど、
1月1日、東京にひとりでいて、
銀座までひとりで映画を見に行った。
その頃の1日は、今よりも全然人の気配がなくて、
通りを独占して歩けるような気分が少なからずあった。


今年の1日、ツマとふたりで再び銀座にやって来た。
数寄屋橋岡本太郎時計塔にごあいさつ。


なんだ、思ったよりもひとがいるじゃないか。


街にくりだすひとが増えたのか、
若かったぼくの目には普段の混雑との落差が激しくて
ひとがいないと感じられたのか、思い出せない。


昔見た映画は「タッカー」。
若きアメリカ自動車王の話。
今日見た映画は「プラダを着た悪魔」。
飛行機の中で去年2回見ているのに、また来てしまった。
飽きなかった。


それから、1月1日は「映画サービス・デー」につき、
料金はおひとりさま千円均一。
ちょっとしたお年玉である。
来年のために覚えておきましょう。


夜、3チャンネルで田辺聖子のちょっとした特集をやっていた。
彼女の連れ合いであった“カモカのおっちゃん”が
いまわの際に言った言葉
「かわいそに わしはあんたの 味方やで」について
ゲストのコメンテーターたちが言っていた解釈が腑に落ちない。


夕暮れどき、ベッドの脇で泣いていた田辺さんを見やって、
意識が混濁する中で不意にかけた言葉なのだが、
「おれが先に死んでかわいそうに」
という無念を伝えた言葉だという解釈を
みなさん、してらっしゃる。


そうじゃなくて、
これは夕暮れどきに泣いてる田辺さんを
「かわいいね」
と初恋のようにナンパする言葉だと
ぼくは思う。


これまで37年連れ添ってきて、
もうじき死ぬよというひとがする
最後のナンパ、死ぬまで初恋である。


でないと泣けない。
ナンパの言葉だからこそのユーモアであり、
美しさである。
気取りがはいる五七五なのである。


死にそうになったことがないのでわからないけど、
ぼくならそうする。


まあいいか。
番組は続いたが、
ぼくは酔いがまわって沈没。どぶん。


さて、1月1日ということで、
新春ミックスCD-R作りました。
題して「1月1日」。
先着1名様にさしあげます。
ご応募はこちら→早速のご応募ありがとうございました!