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なにかあり/とくになし

竹で出来た紙事件

実弟、松永敬介のブログ(「中野と夜と音楽と」)に
プロレスラー、バッドニュース・アレンの訃報と、
それにまつわる松永兄弟の少年時代の話が書いてあるが、
あれは完璧に実話である。
(このあとの話がわからなくなるので、
 まず「中野と夜と音楽と」3月8日分を参照のこと)


ついでに言うと、
アンジェロ・モスカという珍妙なレスラーの名前は
相当のオールド・プロレス・ファンでも、もはや口にしないはず。


弟が「アンジェロ・モスカを知っていた」というくだりが、
そもそも、すでに可笑しい。


当時ふたりが愛読していた
ケイブンシャの「プロレスラー図鑑」みたいな本に載っていた
そのヘンな名前だけで、
たまたま両者の脳裏にひっかかっていたのだろう。


名前がおもしろい。あとの特徴はおぼろげ。
だから、あの“だまし”は成立したのだ。


もっとも、そのあとしばらくして、
ぼくは弟から復讐を受ける。


少しザラザラしたメモ用紙みたいな紙切れを
弟が持ってきた。
「これは竹で出来とる」


そのとき、止せばいいのに、兄としての威厳を示したくなり、
「しゃんね(そうね)」と軽く相槌を打った。


そのとき、弟の顔がにわかに悪魔に変わった。
「ば〜か! 竹なもんか! ただの紙じゃ!」
爆笑、そして逃走。


そのときわかった。
あー、あの「アンジェロ・モスカ事件」以来、
あいつはいつか復讐のときを狙って
虎視眈々と待ち構えていたのだ。


紙が竹で出来ていようがいまいが、どうでもいい。
要は、小さな針でチクリとぼくを刺すことが目的だった。


やられた(赤面)。


この昭和の「竹で出来た紙事件」は、
やがてまったく別のところで
「寒天で出来たレコードプレイヤー事件」に発展するのだが、
それはまたいつか。