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なにかあり/とくになし

電車がアイドル

確定申告を済ませに、荻窪へ。
今年は例年より“混み”がゆるい。
つつがなく終わる。


その後は家で単行本のための作業を続ける。


BGV(バックグラウンドヴィデオ)にと
プレスリー出演の「エドサリヴァン・ショー」を再生したつもりが、
流れ出したのは電車が街を走る懐かしい映像。


およよ。
これは何かと訊ねたら、
生粋の鉄道ファン、はたあきおさんの映像作品集DVDだという。
縁あって、ツマがここ数年
パッケージデザインをいくつか手がけているのだ。
その最新作のサンプルがプレイヤーに収まっていたのだった。


はたさんはプロの映像作家ではなく、
あくまでただの鉄道電車(汽車)ファン。
本線は蒸気機関車だというが、
もう40年近く、8ミリカメラを担いで
日本中、世界中の鉄道を撮り続けている。


その映像をDVDのシリーズとして自主制作で発売しているのだ。


BGVにしているはずが、ついつい手が止まる。
電車が走る風景映像だし、適当に流しておけばいい
と思って見たのが甘かった。


主役は電車(汽車)。
風景は電車を引き立てる脇役に過ぎない。


やがて、電車がアイドルのような存在に思えてきて、
自然と見る者の目と心を奪うように出来ているのだ。


電車がいなくちゃ始まらない。
そんな無言のメッセージが映像全体から沸き立ち、
見る者の脳裏にそれぞれの物語を作り始める。
単なるお宝映像披露では終わらないつつましさがあり、
淡々としているのに、わくわくさせる面白さもある。
うんちくも、解説も、ほとんど無いのにねえ。
不思議だねえ。


全国の熟練汽車マニアが、
はたさんの新作DVDが出るのを待ち構えているのだという。


その気持ち、よくわかる。
たった一回だけ、それも仕事の片手間に見たぼくの保証じゃ
何だか、はなはだ心もとないかもしれないけど、
心奪われたのは本当だ。


鉄子の旅」(IKKIコミックス)が好きなひとにも
是非,存在を知ってもらいたい。


ちなみに、はたさんは「鉄子の旅」で言うと、
“トリテツ”(電車撮影が好きなマニア)ということになる。