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なにかあり/とくになし

すしにまつわるふたりの謎の男

放送事故かと思ったが、
そうではなかった。


男子プロゴルフの試合で、
すし石垣」という名前の選手が
トップに立っている。


しかし、
アナウンサーは
先々週から優勝を続けている某選手が
好位につけていることだけを触れ、
トップを張っている「すし石垣」については無言。


いや、
美しい画面のジャマだ、
はやくどけ、と無言で表明しているかのようだった。
N●K。


すし石垣」は実在する。


数年前までは石垣聡志という本名でプレイしていたが、
アメリカ修行時代に
「サトシ」がアメリカ人に発音しにくいという理由で
ついたニックネームが「スシ」。
それをそのまま芸名として申請して
日本でも使っているのだという。


「すし」と言えば、
もうひとり謎の日本人がいた。


1998年にドイツのレーベルから出た渋谷系コンピ
「SUSHI3003(スシミチミ)」を覚えている人はいるだろうか。


日本のモダン・ポップを紹介するというふれこみで
コーネリアスやらトーキョーズ・クーレスト・コンボやら
何やらにぎやかに収められていた。


その中に、
今なおまったく無名の日本人アーティストが一組だけいる。


Jumboという名で
曲は「ボーイ・フロム・イパネマ」。
イパネマの娘」のカヴァーである。


と、ここに書いても、
「おお」と思い出せるひとは少ないだろうが、
ぼくには忘れがたい理由がある。


20世紀の暮れ、
大学時代の先輩と偶然に会った。
世間話をいくつかするうちに
ふと出た話。


「松永くん、『SUSHI3003』ってレコード知ってる?
 おれの知り合いが一曲入ってるんだよね」


その知り合いがJumboであった。


確か地元の古い友人で、
知人のツテで応募したら収録されたとか、
そんなようなことを言っていたはずだが、
よく覚えていない。


思い出せるのは、
コーネリアスやFPMやカヒミ・カリイと並んで
その見知らぬ男Jumboが座っている不思議な風景で
頭の中がいっぱいになったこと。


先輩を通じてとは言え、
その謎の男と自分が一瞬地続きになったのだった。


そしてとりあえず、
すし石垣(今年は未勝利)、
優勝しろ。