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なにかあり/とくになし

犬さえ道を迷わない

いきなり現れた台風が
雨風を散らす中、
知り合いの編集者Iの結婚パーティーに向かう。


招待状の地図と住所を見た記憶を頼りに
ぐるぐると歩き回るのだが、
なにぶんの豪雨。


たまりかねて
会場に電話を入れると、
遅刻であった。
そして、
どうやら自分がまるきり見当違いの場所にいる
そのことだけがわかった。


雨の中、
親子連れが犬の散歩をしている。


濡れながら途方に暮れるぼくの横を
犬が通り過ぎてゆく。


こころもち、
不思議そうに首をもたげてぼくを見る。


犬さえ道を迷わないのに。


もう一度、かばんの奥から招待状を取り出す。


住所が「神宮前」ではなく「南青山」になっていた。
オー・ノー。
これだから、うろ覚えの早合点はいけない。


じっと見つめた招待状には
正しい地図と住所が載っていた。
だが、ぼくに見えたのはそれではない。


その紙は
ぼくの間抜けな顔を鏡のように映し出していた。


その夜、
パーティーのあと、
数人で酒を飲む。


メンバーに水上徹くんがいた。


彼が「ストレンジデイズ」の今出ている号に書いた
細野晴臣についての原稿、
これがいいんだよな。