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なにかあり/とくになし

「ぼちぼちいこか」に捧ぐ

上田正樹と有山淳司が
サウス・トゥ・サウスのライヴで
毎晩繰り広げていた前半戦。
すなわちアコースティックな関西弁ラグタイム・コーナーを
一枚のアルバムにまとめたのが
75年の「ぼちぼちいこか」。


関西最高、いや、日本屈指の
ライヴ・ソウル・バンドとしてその名を
全国に轟かせていたサウス・トゥ・サウス


シュガーベイブ時代の山下達郎
彼らの人気に猛烈なジェラシーを感じていたのは有名な話だ。


その前フリに
まずは名刺代わりという感じで
「ぼちぼちいこか」は
棚からぼたもち、
ひょうたんから駒で
本家よりも先にレコードになってしまった。


肝心の本家は
ライヴ盤でデビュー後、ほどなく解散。


時を得たのは
「ぼちぼちいこか」の方であった。


その、
コロンと転がり出たというか
つい前に出てしまった出来心と決意の狭間にある
えも言われぬ音楽的ふらふら力が
心を軽くしてくれる。


それが、
このアルバムを思いがけない名盤にしているんだな。


ぼくはこのアルバムを音楽ジャンルで好きなんじゃない。
関西人でもないし。
きっとふらふらとした出来心に惹かれているのだと
今ならわかる。


ときどき、
どうしようもなく
このアルバムの
「とったらあかん」が聴きたくなる。
出来心を歌にしたらこうなったという
完全無欠なお手本のような曲だ。


どうもふらふらが人生に足りんと思うとき、
これを聴く。