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なにかあり/とくになし

ささやかな眼福

朝のNHKテレビ、
10時5分からの「知るを楽しむ」で
グレン・グールドの人物伝をやっていた。


「ハイファイに働き始めたころ、
 松永くんはグールドに対する評価がカラかったよね」
と大江田さんに言われたことがある。


確かにそんなことを言ったかもしれない。


だが、あれはグールドの音楽に点が辛かったのではなく、
ぼくが以前に働いていたレコード屋に来るクラシックのお客さんは
グールドを買うひとはグールドだけが好き、
というひとが多かったという話ではなかったか。


クラシックの
特に中古盤の世界まで迷い込んでレコードを探すようなひとたちは
おおむね女流ヴァイオリニストや
戦前の室内楽、名指揮者の音源を好む傾向が強く、
グールドの立ち位置は明らかに異端だった。


それこそ
クラシック・ファンより
ロックやジャズのファンが
こぞってグールドを買っていたという印象だ。


あらためてグールドの履歴を目にして
1955年にレコード・デビューし、
1964年にコンサート活動を停止したこのひとは
やはりビートルズと同じように
LPレコードのメディア性を意識し
象徴する存在だったのだと
知らされた。


もっとも、
そんな極端な活動をしていながら
アーティスト気取りの態度が大嫌いで
生涯カナダでひっそり暮らすことを好んだというのも
興味深いけれど。


深い分析は
ぼくの役目ではないので
置いておく。


それにしても、
あんなに映像がふんだんに残っていたひとだとはねえ。
眼福でした。


知るを楽しむ」が終わると
趣味悠々」の再放送。


これが今、連日で
「中高年のための今さら聞けないパソコンABC」。


元「おしん」の女優さんが司会なのだが、
注目は“今さら聞けない中高年”代表の中年男性。


脇を残してつるんとしたヘアスタイル、
妙に男前な面構えといい、
これはもう、
いましろたかしの描く中年男そのものだ!


このひとが
超初歩的な質問に「ぐぬっ」といった雰囲気で
沈思黙考するとき
いましろたかし「化け猫あんずちゃん」109ページ
左上のコマと、
ほぼ同じ顔になる。


その“実写”が毎日見られるのもまた
今のところ、ささやかな眼福なのです。