難破ブルース
暑い夏の夜、
浅川マキを聴く。
一番好きなアルバムは
72年の「ブルー・スピリット・ブルース」。
思わずDJでたまにかけてしまう曲は
「難破ブルース」。
大ベテラン、南里文雄が参加したこの曲の
船底をごつごつとぶつかりながら転がる樽のような
ぶかっこうなリズムが好きだ。
クールなピアノがアクセントになっていて
ずっと渋谷毅だと思い込んでいたのだが、
渋谷さんとやるようになるのは、もっとあとの話。
最近気になってクレジットを見てみたら
なんと渋谷森久と書いてある!
東芝の伝説的ディレクターで、
「寺内貫太郎一家」にも毛利久の名前で出演していることは
前にも書いた。
まさか「難破ブルース」で
ピアノを弾いていたとはね。
あのひとなら
死を前にした気楽さみたいな不思議な感覚を
あの曲で表せるような気がする。
といっても
「寺内」内の姿しか知らないんだけど。
大阪のKING JOEと以前にこのアルバムの話をしたら
やつは「大砂塵」が好きだと言った。
あたたかいさびしさを知らせるこの幕切れの曲、
萩原信義のギターにしびれるしかない。