ヨコハマ、テキサス
真っ昼間に横浜を歩いた。
海から離れ、
内陸の方へ。
地元のひと以外は
そうそう来ないような場所なのだということが
街並から知れる。
大通りから角を曲がって
川を超え、
果物屋さんや古びた喫茶店の並ぶ道を
しばらく歩くと
待ち合わせていたひとがいた。
アスファルトが焼けたぎっていて
くらくらする。
それでも風は乾いていて、
「都心よりはましでしょう」と
そのひとは言った。
「テキサスみたいですね」と
ぼくは答えた。
テキサスなんて一度も行ったことはないのに。
数年前に翻訳をした
テリー・サザーンの短篇集「レッド・ダート・マリファナ」に出て来る
テキサスの街中の描写が
不意にぶりかえしたのかもしれない。
こんなに暑いのに
今年は蝉があんまり鳴いてない気がする。