ハプニングス・テン・イヤーズ・タイム・アゴーの続き
十年前の話の続き。
●●●に出向いて、
四千部を引き受けるという約束を
四百部といわれ、
途方に暮れて憮然とした(これがほんとの意味での憮然)。
だが、よくよく考えれば、
それは約束などではなかった。
調子のいい部長氏の大風呂敷にすぎなかったのだ。
●●●のインディー商品流通については、
販売委託を依頼した時点で、
各店舗に発売情報のリリースが流される。
店舗のバイヤーたちは
それを見て何部を取り扱うかを決める。
●●●の若い社員は
ぼくを冷たくあしらう代わりに
そのリリース情報の掲載された冊子をくれた。
表紙の写真と
数行の情報が載っていた。
わずかそれだけの露出で
どこのだれが作っているのかわからない刊行物に
注文が集まるはずはない。
各店舗のバイヤーに直接会うなどして
作品の魅力を直接説くのは
あんたたち(つまりぼくたち)の仕事なんだよと
その無表情な冊子はぼくたちに告げていた。
●●●はそんないい加減なところのある会社で
つぶれてしまうのも自業自得と思いたい部分もある。
だが、
そういう会社がなければ
世に出ることが難しい作品というものがある。
自分たちのやっていたことも
そのひとつであることは間違いない。
白河の清きに魚も住みかねて もとの濁りの田沼恋しき
という川柳を思い出したりする。