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なにかあり/とくになし

モヒカンかチョンマゲか

久々の休日なので
髪を切ることにした。


前回、
床屋さんによる無意識のアレンジで
前髪が妙に長くなってしまったこともあり、
短めにしてくださいとお願いする。
口調はやさしく、
心は般若で。


床屋のテレビで
上野動物園のパンダの歴史をやっていた。
去年の今日、
上野にいた最後のパンダが亡くなったそうなのだ。


鏡にちらちらと映るその映像が気になるものだから、
首がくいくいと動してしまい、
その都度、両頬を抱えられ
正面に矯正される。


動きにしてわずか数ミリの攻防なのだが、
クニ、クニ、クニと
そのやりとりが何度も繰り返された。


だって見たいじゃないか、
パンダの赤ちゃん。


夕方からは
スラムドッグ$ミリオネア」を観に出かけた。


帰りの電車では
ツマを座らせて、
ぼくはつり革をぶらさげている鉄棒に
両の手でつかまりながら
窓ガラスに映った新しい髪型を見る。


今回はうまくいったっぽいな。


そのとき
ちょうど頭の真ん中に
つり革の取っ手があったもので
その三角形を頭の上に乗っけてみた。


こうして見たら
モヒカンかな
それともチョンマゲかな。


顔をちょっと斜めにしたりしながら
クイ、クイ、クイとポーズをきめているうちに
ふと気がついた。


待てよ、
この行動って、
何かおかしくないか……?


大の男(中年)が
頭の上につり革の取っ手を乗せて
顔を小刻みに動かしている図を
頭の中で想像してみた。


というか、
その図は自分の目の前の窓に映っていた!


さらに
もうひとつ気がついたことがあるのだ。


このつり革のポーズ、
無意識のうちに
何年も
何回も
やってたような気がする。


いや、
ついこないだも
やってたわ!


かあーっと
何か熱いものがわき上がってくるのがわかった。
心から恥ずかしい!


しかし、
その一方で、
気づいてしまったことで
自分の中にあった
無邪気な要素をまたひとつ失ってしまったと
残念がっている自分がいる。


またいつか
知らず知らずのうちに
つり革を頭の上に乗せている自分に
出会う日がくるのか、
どうでもいいやと感じながら、
人生のスピードにあせる自分がいる。