mrbq

なにかあり/とくになし

クアトロの右手でぼくは

寺尾紗穂@渋谷クラブクアトロ


渋谷クラブクアトロのフロアにて。
入り口のドアを開けて
右手に行くべきか、
左手に行くべきか、
いやいやそれとも中央か。


左手は
ステージに向かって左手前に立つ大黒柱さえ過ぎてしまえば
思いがけずステージを俯瞰出来る視界がひらける。


しかし、
寺尾紗穂さんのグランドピアノは
ステージ左奥に向けて斜め横に配置されているので
今日に関しては左手だと後頭部しか見えない。


もちろん中央こそ素晴らしいのだが
混んでくると人溜まりが出来るし
なにしろ前にうしろに通行人が多く
集中出来ない場合がある。


そして結局
右手に向かう。


なんだかんだで
ぼくはこのハコの右手を好む。


ところが
寺尾さんがピアノに腰掛けた瞬間に
狼狽してしまった。


譜面台!
見事に顔の下半分をぼくの視界からさえぎる黒い板。
そのことを忘れていた。
不覚。


だが次の瞬間、
黒く磨かれたグランドピアノは
思いがけないものを映し出した。


天板の裏に反射してさかさまに映るのは
歌っている寺尾さんの顔。


譜面台の裏に映るのは
ピアノの弦をはじくダンバーフェルト。
波のように
踊るように
ふと物思いにふけって立ち止まるように。


見えない口元の代わりに
黒い鏡に映ったピアノの動きばかり見ていたかもしれない。


それは
クアトロの右手がくれた気の利いた贈り物だった。


ちょうど一年半くらい前に見た
同じクラブクアトロでは
見ているこちらも息が詰まりそうになるほど
耳も意識もそばだててしまったけど、
今日の寺尾さんは
ずっとたくましく感じられた。


ゲストで登場した星野源の弾き語りも
ひさびさに聴いたけど、
よかった。
歌詞のついた「老夫婦」もよかった。


ぼくが初めて寺尾さんを見たのは
星野源×寺尾紗穂という
渋谷7th Floorでの「クイック・ジャパン」主催のイベント
QJナイト」(2006年9月)でのささやかな共演だったから、
そのあと、細野晴臣トリビュートでの共演(「日本の人」)はあったとは言え、
こういう風に
大きな場所でもう一度というめぐり合わせにも
しあわせを感じる。


終演後には、
星野源の力を借りてでも
今日こそ寺尾さんにきちんとあいさつをするぞと思っていた。


おまえ(ぼく)はライヴ告知のチラシに
コメントまで偉そうに書いているくせに
まだ本人と直接話したことがないのか?


そういう意味では
ぼくにとっても今日は
大事なめぐり合わせの日でなくてはならない。


そんな気概で
ひそかに鼻息を荒くしていたら、
意外な援軍が現れた。


今日初めて知ったのだが、
ぼくの古くからの友人が
寺尾さんの大学時代の同じゼミ生で
招待を受けて会場に来ていたのだった。


「よくブログに書いてるからさー、
 とっくに知り合いだったと思ってたよ」


そんな気軽に言わないでください。
でも力は貸してください。


そんなわけで
ようやくごあいさつをすることが出来ました。
しどろもどろでありました。


開演前にかかっていた
ブリティッシュトラッドは
寺尾さんの選曲だったんですか?


なんて
話のきっかけにしようと思っていたどうでもいいことは
きれいさっぱり、すべて忘れてしまったんです。


さて、
告知が遅くなってましたが、
6月6日、いつもお世話になっている恵比寿Tenementにて
イベントをやります。


6/6 (sat)
『encore !』
DJ’S :内田靖人 樺澤衝一 原田伸彦 藤瀬俊 松永良平
GUEST DJ’S : 小西康陽 常盤響 大江田信 and more


Start : 18:00
Charge : \1500(ドリンク別)
恵比寿Tenement


夜中までやってますので
お近くの方
お時間ある方
よい音楽が好きな方
お越しください。