mrbq

なにかあり/とくになし

いねむりばかりしてたら

シングル盤を大きな音で聴きながら
ハイファイのカウンターで
眠りこけていた。


深酒というほどではないが、
ゆうべの徹夜の名残は深く、
腕を組んだまま椅子に背をもたれ、
どろりと寝る。


居眠りというものは
机に突っ伏すというイメージが強いが、
学生時代の授業中を含めても
そんなばれやすい姿勢で寝るということは
なかったと思う。


いかに周囲に気づかれぬよう
この世とひとときおさらばするか。


その鍛錬を
怠りなく積んできた結果、
どうやら
何となく深い考えごとをしているように、寝る、
というワザを開発することが出来た。


……と、思っていたのだが。


「あら?」
女性の一声で目が覚めた。


「あら? あらあら?」
ふわっと現世に意識が戻り、
目の前に男性と女性。
はて? 今何時?


時計に目をやる。
時間はそれほど経ってない。
シングル盤は回り続けていて
音楽も鳴っている。
そうだ、おれは
ピクシーズ・スリー「コールド・コールド・ウィンター」のイントロを
確かに聴いたんだ。


その曲が終わってないということは
まだ2分ぽっちも経ってないってことだろう。


そのわずかな時間の居眠りを
お客さんに見られてしまった。
これがいわゆる“間が悪い”ってやつですか。


あわあわあわあわと
言葉にもならないごあいさつをして
盤をひっくり返した。


ちなみに
このお客さんたちが目撃したであろうぼくの顔は
こんな風だったはずだ。


修行の道は
まだまだ長い。