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なにかあり/とくになし

みっつのお願い

パノニカ・ドゥ・コーニグスウォーター。
あるいは、
パノニカ男爵夫人。
あるいは、もっと親しみ深く
ニカ。


1913年12月10日、
世界有数の富豪ロスチャイルド家に生まれた彼女は
1934年にフランス人外交官と結婚。
男爵夫人としての地位を得た。
1951年、
彼女は夫と別居し、ニューヨークシティにやって来た。
この転居が
彼女の人生を永遠に変えた。
1956年に夫妻は事実上離婚するが、
パノニカ男爵夫人は
ポップカルチャー史にその名を大きく残すことになる。


ニューヨークにやってきた彼女は
風変わりな黒人ジャズ・ミュージシャンたちを友人に得た。


なかでも
もっとも親しかったのが
チャーリー・パーカー
そして
セロニアス・モンク


パーカーが息を引き取ったのは
彼女の家だった。


1950年代から60年代にかけて
彼女はニューヨークのジャズシーンを支える
素敵なパトロンだった。


彼女に捧げられたジャズの名曲は多い。
「ニカズ・テンポ」
「ニカズ・ドリーム」
「ブルース・フォー・ニカ」などなど。
そして
セロニアス・モンクの「パノニカ」。


88年に亡くなった彼女の本が出ていたことを
つい最近になって知った。


生前、
親愛なるジャズ・ミュージシャンたちに
彼女はある質問を投げかけ、
その答えを蒐集し続けていたのだ。


それは
「今、あなたにとっての、みっつのお願いは、なあに?」


ルイ・アームストロングからコルトレーン
マイルス・デイヴィスからサン・ラーにいたるまで
300人に及ぶジャズ・ミュージシャンたちの願いごとを、
彼女が撮り貯めていた貴重なプライベート・ショットとともにまとめた本。


それが
「Three Wishes」(Abrams Image)だ。


もちろん、モンクも最高の答えと写真を残している。
パーカーは答える前に亡くなってしまった。


これは偉業でも何でもない。
愛していたから
愛されていたから
それがいつもと変わらぬ日常だったから実現した
さりげない真実のスケッチブック。


だれもこれがポエトリーだなんて思いもしなかった
最高の詩集。


ぼくは
ふるえながら
ページをめくってます。


今日のぼくのみっつのお願いは、


1. この本を訳したい


2. しめきりに遅れている原稿をさらっと書き上げたい


3. やきそばを食べたい


この素晴らしい本は
今、Amazonで比較的安価にて入手可能。