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なにかあり/とくになし

モンクとピンポン

パノニカ男爵夫人の遺した名著
「Three Wishes」を
相変わらずめくっている。


写真の中で
とりわけ大好きなのが
3ページにわたって踊るセロニアス・モンク
ピンポンをするセロニアス・モンク


1950年代末に
彼女がモンクに薦められて購入した
ニューヨーク郊外の家“キャットハウス”を
多くのジャズ・ミュージシャンが訪れ
くつろぎのひとときを過ごしている。


キャットハウスには
文字通り、猫も飼われていたが、
もちろん、ここで言う”キャット”とは
“ジャズ・ミュージシャン”を指す隠語であることは言うまでもない。


キャットハウスで
上半身はだかになってピンポンに興じるモンクを目撃することは
彼のどんな伝説を見聞きするよりも
彼がどのように生きていたかを実感する体験になる。


それにしても
ピンポンか。


昔、
ぼくの実家には
ピンポン台があって、
兄やふたりの弟とたまに遊んだ。


ぼくは完全に
下手の横好きだった。


うまいひとは別にすれば、
ピンポンほど
空振りしたり
無理な体勢で球を打ち返すときの姿が
こっけいなスポーツはない。


その一点で
ぼくはピンポンを憎めない。


ただ一枚の写真で見る限り
モンクの腕前は
ぼくとどっこいどっこいかしら?


自分勝手な魔球を
つくりたがるタイプかしら?


いいわけがましく
再戦を要求するタイプかしら?


この本を見ていると
ぼくはモンクと
下手なピンポンでやりあえる気がしてくる。


キャットハウスは
モンクがほとんど引きこもり状態になった70年代を過ごした
ついのすみかでもあった。