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なにかあり/とくになし

目で見るデング熱

デング・フィーヴァーというバンドを知ったのは
いつぞや安田謙一さんが紹介されていたことがきっかけだった。


日本語で言うと
ずばり伝染病のデング熱


カンボジア難民の女の子をシンガーに据え、
60年代に存在したカンボジアのロック歌謡を
現代のアメリカ西海岸に復活させるべく奮闘中のバンド。


こう書くと勉強くさくてイヤな感じだが、
実際のバンドには
もっとアバウトなかっこよさが漂っていて
そこにしびれる。


とは言え、
最初から刺激のハードルが高い音楽だけに
音源だけではカラフルさに欠けるというか、
ちょっと不満がつのる面もあるんだな。


そう思っていたら、
最適のアイテムが発売になった。


シンガーのチョム・ニモル嬢の里帰りを兼ねて
アメリカのロック・バンドとして
初めてカンボジアを訪れて
各地で演奏を繰り広げる様子をとらえたドキュメンタリーDVD
「スリープウォーキング・スルー・ザ・メコン」がそれ。


目で見るカンボジア
クメール文化の酩酊感も相当だが、
デング・フィーヴァーの生演奏に触れる機会として
これ以上のシチュエーションはない。


DVDの中で語られる興味深い真実は少なくない。


かつてカンボジアには
圧倒的に素晴らしいカンボジア・ロック歌謡が存在したこと。
ベトナム戦争をめぐる混乱、
続くポル・ポト政権下での圧政、
そしてその後90年代まで続いた内戦状態により、
その時代の名歌手はほとんどすべて虐殺されたこと。
したがって、
若者たちよりも老人たちが
デング・フィーヴァーの奏でる
かつてのカンボジア・ロックの幻に反応していること、などなど。


Amazonの肩を持つわけじゃないが、
DVD+サントラCDで2200円ちょいは、安い!


デング熱の音楽的患者になるために
これは最良のテキストだ。


それでも
ぼくの言葉じゃ信じられないというひとのために、
本作に添えられた推薦文を。


「きみたちはまるで
 ブロンディとレッド・ツェッペリンの合体形だな。
 きみたちをもっとよく知りたい。
 だっておれはその両方とツアーしたことがあるんだから」
 ーーーレイ・デイヴィス(キンクス


話は変わって「Three Wishes」。


P-Vine Booksより
今年のクリスマスごろに邦訳刊行予定だそうです。
訳は鈴木孝弥さん。


お楽しみに〜。