おれが死んだらおれの話はしないでくれ
「プリーズ・ドント・トーク・アバウト・ミー・ウェン・アイム・ゴーン」は
1930年代に書かれたスタンダード・ソングで
カントリーやポピュラー歌手、ジャズ・ミュージシャンなど
数限りないひとたちが歌っている。
NRBQのレパートリーにいつからあるのかは
はっきりしないけれど
彼らが80年代初めにレッド・ルースターから
ほとんど気まぐれに出したとしか思えない4曲入りのライヴEP
「イン・パーソン」に入っている
アル・アンダーソンが歌うしっちゃかめっちゃかな駆け足ヴァージョンが
今でもベストだと思っている。
テリー・アダムスとスティーヴ・ファーガソンの双頭アルバム
「ルイヴィル・スラッガーズ」でレパートリーに復活したときも
うれしかった。
歌詞を見ると
これは昔の女(男)に
おれ(あたし)の未練をぐちるなよ(悪口を言うなよ)という
洒落た別れの歌なのだが、
“gone”には“いなくなる、死ぬ”という意味もあり、
そう意訳してみるとなかなかに奥の深い歌に思えてもくる。
♪
おれが死んだらおれの話はしないでくれ
だっておまえとおれはもう友達じゃない、これから先は
なあ、いい思い出なんかどうせ言えっこないんだから
何にも言わない方がいいってこと、それがおれからの忠告
おれが死んだらそれぞれの道を行くんだ
それが一番いいことなんだ
ほら別れのキスだよ!
きみに良いことがたくさんありますように
じたばたしたっておなじこと
なあ、いいか
おれが死んだらおれの話はしないでくれ
(意訳:松永良平)
今夜、テリー・アダムス・ロックンロール・カルテットが
渋谷のO-Nestでこの曲をやったとき
ぼくが何だかすごく切なくなってしまったのは
どんちゃん騒ぎなロックンロールのにぎやかさには似合わない
勝手な勘違いのせいかもしれない。
NRBQというバンドを通過していったみんな、
天国に行ったスティーヴ・ファーガソン、
彼らも「おれが死んだらおれの話はしないでくれ」と思っているだろうか。
そして
ライヴという今を生きて
かけがえのない音楽を生み出して、
一心不乱にピアノをチョップチョップで叩き弾きし、
会場が熱狂しようというその瞬間に
DX-7をいじくって「ふにゃっ」と変な音を出してはにやりと笑う
テリー・アダムスと
彼のロックンロール・カルテットは?
答えは決まってる。
おれが死んだらおれの話はしないでくれ。
生きてるおれと話をした方が
生きてるおれとロックした方が
絶対楽しいだろ?
何年か経てば
若いメンバーたちの“我”がもっともっと音楽に染み出して
テリー・アダムスともっともっと組んず解れつからまりあって
もっともっとバンドを好き勝手に楽しんでいるだろう。
このバンドで生きてる彼らをもっと見てみたい。
なお、
ここからは余談だが
この日、松永良平とそのツマ、弟が帰宅途中の電車の中で
こんな事件があったそうです。
いいか!
おれが死んだらおれの●毛の話もしないでくれ!