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なにかあり/とくになし

はじまりの日

ボブ・ディランの絵本が出たんだよと
お客さんに見せていただいた。


ディランの絵というと
ザ・バンドのデビュー・アルバムで描かれた
バスドラを前から叩くドラマーや
ピアノを裏から覆いかぶさって弾くピアニストを
思いつくままに塗ったくったものを
条件反射的に思い出す。


あんなすさまじい絵で埋められた絵本があるのなら
それは見てみたい。


しかし
カバンから出てきたものは
もっとチャーミングできちんとしたものだった。


絵本らしい大判サイズで
「はじまりの日」というタイトルがついている。



ボブ・ディラン
ポール・ロジャース画
アーサー・ビナード
岩崎書店刊。


ボブ・ディラン著と言っても
ディランの書き下ろしではなく
彼が自分の子どものためにかつて書いた曲
「フォーエヴァー・ヤング」の歌詞を使って
絵本にしたという意味だった。


ポール・ロジャースは
元フリーでクイーンにも最近いたあのシンガーではなく
アメリカのイラストレイター。
歌詞を一行ずつ使いながら
ディランの半生と
曲に込められた子ども達への思いを絵でひもといてゆく。
彼が事実上の著者のようなものだ。


原書はもちろん英語で
アメリカ人で日本語の詩人でもあるアーサー・ビナード
訳をつけている。


本邦初の歌える正式な日本語訳だと謳ってあったが
今までにも歌詞の対訳はあったわけだし、
正式という意味はいまひとつよくわからない。


もっと言えば、
この本についている訳は
描かれた絵に対して
解釈が近づいているという気もする。


それに
ディランの歌詞そのものが
英語の時点で
すでにひとつだけの意味にとらわれない
どのようにでも解釈可能なもののはずだ。


日本語詩としては
素直に心を打つものになっているんだから、
出版社が用意したキャッチフレーズの分だけ蛇足だと思った。


それにしてもこの本、
似たような企画が去年日本でもあった気がする。
その取材もした気がする。


あ!


そうか。
これか!