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なにかあり/とくになし

色彩都市にて

急にお店を中抜けして
日比谷野音に来てしまった。


Springfields '10東京場所」は立ち見も出る盛況ぶり。
開演には間に合わないし、
最後までも全然いられない。
でも来てしまった。
去年の今日もここにいた。


先月もいた。
あの日は寒かった。


野音名物の超大盛りやきそばでも食べてからと思ったが、
もうキセルの演奏が聞こえていたので
足早に中へ。


うしろの方で
キセル星野源バンドを見た。


キセルは新作「凪」から
星野源バンドはソロ・アルバム「ばかのうた」から
生まれて間もない曲を
昼から夕のすごしやすい空気に放り出していた。


星野源バンドは
客席に対し半円を描くサケロック・スタイル。


レコーディングを共にしているとは言え、
バンドのサウンド
まだくすぐったいほど手探りな印象もあった。
小さな発見かもしれないが
伊藤大地コーラスと
星野源ヴォーカルとの相性がすごくいい。
もうすこしこのバンドでの歌ものの経験が
積み重なってもいいのかなあと思う。


アルバムの中で
キーポイントのひとつになっている「茶碗」は
この日、ライヴで初披露なのだと言っていた。


しかし、
そのほほえましい印象を
するっとさらってしまったのが
そのあとに登場した大貫妙子さん。


一曲目「色彩都市」のイントロが流れた瞬間に
すこしほがらかにゆるんでいた場内の空気が
明らかに引き締まった。


オリジナルの坂本龍一アレンジを踏襲しつつ
現代的な音の置き場を意識したバンド(小倉博和森俊之沼澤尚鈴木正人)のうまさに
手首をあらぬ方向に曲げられたようにするするっと引き込まれ、
細いのに強くてよく通る大貫さんの歌声に
完全にノックアウトされた。


この気候、
この時間帯、
ビル街に囲まれた野音というロケーション、
そのすべてをふまえた
一曲目の選曲として
完全にジャスト。


しかしだ。
これはあかん。
すでに時計は
お店に戻ると予告した時間をとっくに過ぎていた。
覚悟を決めて退場する。


細野さんは最初から無理とあきらめていたが
今日の大貫さんの
あの一曲を味わえたのだから
文句はない。


「都会」をやった?
「いつも通り」も?
知らん知らん(くやしさに耳をふさぎ)。
色彩都市」一曲で
もう脳が満腹だったんです。