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なにかあり/とくになし

黒髪だけで

黒髪だけで
いや
正確に言うと
女子の黒髪を描いたそれだけで
胸がどきどきしたのはいつ以来だろう。


ゴトウユキコR-中学生」1巻(ヤングマガジンKC)は
頭の裏側に貼り付いて
剥いでも剥いでも離れなくなる
そんな漫画だった。


ペンネームからすると女性だろう。
押切蓮介にも絵柄は似ているが
大澄剛も思い出した。
大澄剛のストーリーに
押切蓮介がちょっかいを出しているような感じでもある。
だが結論を言うと
彼女はどちらに与するものでもない。
ゴトウユキコは何者なんだという
おそれにもにた好奇心だけが
どきどきとうずまく。


ちばてつや大賞受賞作家だそうだ。
去年19歳で受賞した。
ということは受賞作品の掲載は「週刊ヤングマガジン」か?
ヤンマガ」しばらくスルーしてた。
おこたってた。
後悔した。


その後
月刊ヤングマガジン」で連作短篇の掲載をはじめた。
それがこの
えげつなくて愛おしい中学生群像劇
「R-中学生」。


まじかよと
おののくのは
その画力やストーリーラインだけではない。
こんな思春期をおれは知っているぞというか
何故そんな過ぎ去ったはずの
忘れたいはずで忘れられない
他人の中に眠るものを引っ張り出す術を
知っているんだ、あんたはという
そういうおののきだ。


ぼくは
ソラニン」にも
ボーイズ・オン・ザ・ラン」にも
そんなに動じなかった。


だけど
この漫画には
気がよろめいたんだ。


目もいい。
いや
でもやっぱり
髪だろう。


太い筆で
ぐしゃっと紙を押さえ
短く一気に刷け終えたようなその黒髪は
ぼくの心のなかで今ものたくってる何かだ。
きっと今夜夢に出るだろう。


BGMはモーモールルギャバンで。