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なにかあり/とくになし

「幻覚ピカソ」に動いた心は幻覚なんかじゃない

古屋兎丸幻覚ピカソ」(ジャンプコミックス)のことを
最初から期待していたわけじゃなかった。


ジャンプスクエア」とは言え、
天下の「少年ジャンプ」系列誌に
兎丸先生が連載を持ったと知ったときは
すくなからずびっくりしたが
まずは様子見という気持ちがあったのは確かだ。


その「幻覚ピカソ」が3巻で完結した。
最近の“人気漫画”としては
そのヴォリュームはちょっとすくなく感じるかもしれないが
決して駆け足とも思えなかったし
むしろ物語を書ききったというすがすがしさがあった。


グロにもシモにも大きく踏み外さず、
身近で共感しやすい内容を扱いながら
物語のスケールはおそろしく大きく
しかも
簡単に映像化をゆるさない
漫画そのものでしか出来ない表現。


古屋兎丸なら
それくらいは出来て当然。
そう言う方は気楽だが、
少年漫画として
子どもたちによくわかるような作品世界を意識しながら、
それと同時に
因業なファン(ぼくも含め)の相手もしなくてはならないのだから
簡単ではなかっただろうと思う。


少年時代に
友だちといまいちうまくつきあえない毎日を過ごして
教室で漫画やイラストを熱中して描いていて
気がつくと妄想ばかりしている主人公に起きた
ある変化と宿命。


そんな少年時代の苦い味を知っているおとなたちも
やさしくとりこにして巻き込みながら
最後にはきちんと少年漫画としての決着を着けた。


最終回を読んで
ぼくはまたしても
電車のなかで泣く寸前まで追い込まれた。


この感動そのものが
幻覚なのかしら?


いいえ、
「幻覚ピカソ」とその感動は実在した。
まぶた、濡れましたから。


そう言えば今日、
もう一冊、本が届いた。
先日のじゃんけんに参加された方の
メールに添えてあった推薦図書(漫画)。


田渕由美子「フランス窓便り」。


1976年、「りぼん」産。
お目目がでかいぜ!


これから読むので
感想はまた今度。