あわれカピバラ

今週聞いた言葉で
一番ショッキングだったもの。

それは
「カピバラのなまくび」！

夜の電車で
ひさびさに東スポを読みながら立っていたら
小学生高学年かな、
ふたり連れの男の子が
終面に出ているサッカーの記事をのぞきこもうとしていた。

東スポは子どもには毒とは言え、
サッカーならいいかと
見えるように掲げてあげた。

それを見ながら
彼らは適当にぺちゃくちゃとしゃべっている。

「なあ、バクチってどういう意味？」
「勝ち負けにお金を賭けることだよ」

眼鏡をかけた方の男子が
見事に答えた。

「おすもうさんが今やってるんだよ」

おすもうさん全員じゃないけどね。

「勝ち負けにお金……」

活発そうな方の男子が
人生の深い闇を覗き見てしまったかのように
妙な間でため息をついた。

「なあ、
　ところでそれ何？」

活発くんが眼鏡くんに問いかけた。
眼鏡くんが首から提げている携帯に
茶色い動物の顔をアップリケみたいにした
かわいらしいストラップが付いていた。

「ああ、これ？
　カピバラのなまくび」

ええー！
カピバラの生首って！
それって売ってるの？
ていうか
それアリなの？
あわれカピバラ、
生首晒されたり。

「阿佐ヶ谷〜、阿佐ヶ谷〜」

ああもう、
電車はいつだっていいところで
目的地に着きやがる。

カピバラの生首を提げた眼鏡の男の子、
きっと中央線のどこかにいるはずだ。