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なにかあり/とくになし

悪気のないハメルーンの笛吹きみたいな

友部正人+東京ローカル・ホンクという
ぐっとくる組み合わせのCDをいただいた。


タイトルは「クレーン」。


友部さんみたいに
つよくするどい言葉や
するっと内側にすべりこむおそろしいフレーズを
たくさん持っているひとの音楽は
原稿を書いている間は聴けない。


だから
このCDは結構前にいただいていたのに
ようやく今聴いている。


友部さんには
70年代にスカイドッグ・ブルース・バンドと共演した
「どうして旅に出なかったんだ」という傑作がある。
肌触りはすこし違うけど
あのアルバムのことを思い出した。


バンド・サウンドの方が
弾き語りしているときよりも
やわらかさが出ていた。


今回もそんな気がする。


でも
そんなときこそ
気が許せないんだ。


友部さんの歌には
悪気のないハメルーンの笛吹きみたいなところがある。
バンドや共演者や聴き手を
しっかりと音楽で安定に導くとみせかけて
知らない場所に連れていくような不思議さがある。
そういう面が
何となく引き出されているような気がするアルバム。


まあ
ついさっきCDをかけはじめたばかりの
あんまり熱心な聴き手とはいえない人間の言うことです。


東京は
しばらく天気のわるい日が続くらしい。
そういう日は
友部さんの「梅雨どきのブルース」が
無性に聴きたい。