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なにかあり/とくになし

フリート・フォクシーズを、ここで、今日。その1

マンハッタンのチャイナタウンの
中心からすこしはずれたあたりに
その宿はある。


宿を出ると
ここは中国かと見まがうほど
街並も通行人も
あたりにはニューヨークのかけらもない。


それでもこの宿を選ぶのは
ニューヨークとしては破格の値段で
風呂が部屋についているから。


去年の秋に泊まったホテルは
共同トイレとシャワーは我慢出来たが
足が伸ばせないほど小さなベッドに
ヘキエキしていた。


なので
それよりはすこし値が張るが
一室の主としてしばらく暮らすには十分なこのホテルを
今回は選んだのだ。


ただし
部屋の割にでかいベッドのせいで
衣装棚の扉が開かないという
不思議な構造にはなっていたけれど。


2011年の5月、
その7階の一室で
ぼくは今か今かと待っていた。


待っているものは一通の郵便物。
中身はチケット。


フリート・フォクシーズを見るためのチケットだ。


セカンド「ヘルプレスネス・ブルース」のツアーは
4月末から始まっていた。
ちょうど5月にニューヨークに行く予定(買付)があったので、
どうせ行くのならと
照準をあわせてバッチリとスケジュールを組んでみた。


しかし
組んでみたのはいいが
チケットなんて売り切れだ。


あちらの事情も
日本のチケットぴあと似たようなもので
チケットマスターで発売されたその日に
ニューヨーク公演のチケットは完売した。


すこしして
追加公演が発表されたが
それもすぐに消えた。


しかたないので
ネット・オークションに手を出した。
安くはないが
それでも同時期に行われるアデルのコンサートに比べたら
4分の1くらい。


ぼくが待っているのは
そのチケットだ。


送金の手続きを済ませ、
その出品者からの連絡を待っていると
ある日
こんなメールが届いた。


「きみは日本にいるんだってね。
 今から日本に送るんじゃ
 震災とかもあってちゃんと届くか不安なんだ。
 ぼくは信用第一人間だから!
 なので
 きみの泊まる予定のホテルに直接送っていいかなあ?」


ホテルに問い合わせると
宿泊予定のRyohei Matsunaga宛の郵便物を留め置くことは可能との返事。


というわけで
すっかり安心してホテルで待っていたのだ……が、
こないんだよね、これが。


というわけで
話はここからはじまる。
なんだか長くなりそうじゃない?
まあ、いつもの調子で
伸びたりちぢんだりしながら
フリート・フォクシーズにちかづいてゆくつもり。


まずは第一回。(つづく)


フリート・フォクシーズを、ここで、今日。その1