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なにかあり/とくになし

ひらくドア

いつもより一本早い中央線。
ホームに駆け上がると
ちょうどドアがひらくところだった。


飛び乗って
新宿行き。


ふっと息をつくと
うしろから肩を叩く者がいる。


なにやつ!


ちょっとドギマギ気味に振り返ると
とても懐かしい顔だった。


大学時代の初めに語学のクラスメートだった女性。
やはり同じクラスだった
ぼくの友人と結婚したので
今もふたり揃っての年賀状はもらっているが
実際に会うのは……どれくらいぶりだろう?


「19年ぶりだよ!」と
彼女は言った。


19年ということは
最後に会ったのは92年。
ふたりの結婚パーティーということになる。
彼らは4年で卒業して
すぐに結婚したのだ。
ぼくはまだそれから3年留年をつづけた。


「変わってないねー」と彼女に言われたが、
そう言いたいのはぼくのほうで、
帰国子女らしく
物怖じしないではきはきと言葉を口にする彼女のイメージは
結構あのころのままだった。


新宿駅まで
ああだこうだと
とりとめもない話をして
改札の手前で
「今度あそびに行くよ」と言って別れた。


「変わってないねー」か……。


実を言うと
「変わってない」どころか
退行してるかもしれないんだけど。


電車に走って飛び乗ったとき
ぼくのiPhoneから爆音で流れていたのは
ひらくドアの「七夕のお祭り」だったんだよ。


彼女と別れて
新宿を歩きながら
イヤホンを突き刺し
ヴォリュームを最大にして
もう一度「七夕のお祭り」から
ひらくドアの「思い出」全曲を聴いた。


なんか
超揺さぶられた。