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なにかあり/とくになし

ハロウィンの夜、先輩と永井宏さんの話を「けんか」でした

異国のレコード屋
先輩と待ち合わせをした。


おなじ大学で
2学年上。
学生時代には
夜が明けるまで
ああでもないこうでもないと話をした。


その後
おたがいに人生の変化で疎遠な時期もあったが
何年か前には
定期的に会って話をしようなんて計画が盛り上がった時期もあった。
結局、忙しさに負けて
2回くらいで立ち消えになってしまったけれど。


その先輩が
今年の春から海外赴任をしているという手紙を受け取った。
年に一、二度、ぼくも訪れる街なので
そのうち会うこともあるだろうと思っていた。


それが今日。


今夜はハロウィンで
年に一度だけの仮装をたのしむひとたちで
にぎわっていた。


大規模なハロウィン・パレードがはじまる前に
大通りをわたって食事をした。
その後
もう一軒行こうというので
日本人街へ。


高円寺の店みたいなムード作りで
当たっている居酒屋があるのだという。


「松永とひさびさに会うから
 高円寺っぽい店がいいかと思って」


ぼくが学生時代に高円寺に住んでいたことをもちだして
先輩は快活にからかう。
こういうところは変わらない。


もっとも
その先輩だって
独身時代に高円寺に何年か住んでいたはずだけど。


店の名は? と訊くと
「けんか」。


はあ、「けんか」?


しばらく歩いて到着した「けんか」は
結構なにぎわいで
しばらく店の前で待たされた。


高円寺というより
昭和三十年代的なムードを押し出しているようで
スピーカーからは
音のわるい歌謡曲や懐かしのテレビテーマが流れていた。


海外にいるときに味わう
過剰にデフォルメされた
エセ和風のかなしさに比べれば
まあこの店はマシな部類かなとは思うけど。


どうやら先輩は
ノスタルジックな話をしたいのではなく、
日本(あるいは日本人の才能)をテーマに
この異国で何がビジネスとして出来るかを話したかったようだった。


それともうひとつ意外な話が。


亡くなった美術作家の永井宏さんと先輩は
共通の知人を介して交流があったそうなのだ。


永井さんが亡くなったことを告げると
ちょっとショックを受けていた。


その縁も
高円寺に住んでいた時代に出来たものだったと
先輩は語った。
高円寺の飲み屋でそんなことを先輩が力説していたら
近くにいたおじさんが
「おれ、永井と知り合いだよ」みたいな流れだったそうだ。
案外
高円寺的なものを
憎からず思いだしているような気配でもあった。


「永井さんの「カフェ・ジェネレーションTOKYO」って素晴らしい本だったよね」


先輩は言った。
ぼくに異論があるはずもない。


ハロウィンの夜
先輩と永井宏さんの話を
「けんか」でした。


いろいろした話のなかで
このテーマが
後味として一番じわっと残った。


このつづきは
またいつか。