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なにかあり/とくになし

日本の幸福

昨日につづきリキッド・ルーム。
今夜は
キセルを見た。


序盤から「雨音」
めずらしく「チャーリー」、
サイケデリックな長尺アレンジになった「見上げる亀」……。


畳み掛けるように攻め立てるのではなく
自分たちの手元や足下を確認するように
いつもキセルは、進む。
だから
ぼくたちは
音のなかに迷い込むけど
手掛かりを見失って戸惑いはしない。


今日の彼らが
おなじみでも
よそゆきでもないものに聴こえるってことは
それだけ強くなってるってことでもあるし
あたらしくなってるってことでもあるんだろう。


いい新曲だとウワサに聞いていた
「覚めないの」は終盤に披露された。


いい、どころか、すごい曲だった。
バンドとしてのキセル
ひときわ強いグルーヴにドキドキした。


3・11があって
そのあとのぼくたちがいて
悲しみとか無力感とか怒りとか
そういうものにぐるぐると苛まれながらも
毎日を生きることと
音と言葉の両方と
言葉にならない何かも動かしながら
しっかりと向き合った曲だと思えた。


そして
「覚めないの」につづけて、
先だっての東北ツアーで
オオルタイチと一緒にやっていたカヴァーだと
兄さんが言って歌いだした曲に
ぼくはまったく不意を突かれた。


タイトルは「日本の幸福」。
オリジナルは、加藤和彦


そのレコードをぼくは確か持っていたはずだと
思い出そうとしているうちに
目頭がじゅっと熱くなってきた。


なんだろう、この感じは?


「覚めないの」で歌われた景色と連鎖して
感情が勝手に高ぶってしまって
もうどうしようもなくなった。


「日本の幸福」は
加藤さんのファースト・ソロ・アルバム
ぼくのそばにおいでよ」に収録されている。


家の棚を探したら
LPレコードが収まっていた。
オリジナルの「日本の幸福」は
三部構成の組曲になっていた。


驚いたのは
レコードのラベルにわざわざ英語で記されたタイトルだ。
そこに
ぼくが何故泣きそうになったのかを解き明かす
秘密のからくりが記されていた。


「日本の幸福」の英語タイトルは
「THIS IS MY LAND」というのだ。


「ここがぼくの国」と
また思えるようになることが
「日本の幸福」なんだと
もう40年以上も前に加藤和彦は歌っていた(作詞は佐藤信)。


ひさしぶりに聴きなおした「日本の幸福」は
オリジナルでもすごい曲だった。


加藤さんの歌でも
キセルの歌でも
今たくさんのひとに聴いてほしい曲だ。