mrbq

なにかあり/とくになし

バカと正直のための祝祭

SCOOBIE DOのライヴを
どうしても見ておきたくなって
急に強くなった雨風のなか恵比寿へ。


アルバム「MIRACLES」で
ひさびさに取材をした印象が
すごく前向きでふっきれていたし、
なによりアルバムが良かった。


イベントなどをのぞいて
ワンマンで彼らを見るということになると
かれこれ何年ぶりだろうと思いながら
開演直前にリキッド・ルームに。


いきなり
お客さんの熱気に気圧された。


コヤマシュウの気合一声からはじまる
オープニングの一部始終は
早口でまくしたてるプリーチ風の煽りと
駆り立てられるように盛り上がるバンドの呼吸に至るまで
昔とほとんど何も変わっていないが
これからはじまるショーに対する
客席の期待感の
ぐををををっと地鳴りのような高まりは
昔とは比べものにならないほど大きい。


何人かの
死人や負傷者が出るような
南米かどこかのクレイジーなお祭りの幕開けのようですらある。


結成から16年という歴史のなかで
レパートリーも増えて
お客さんの習熟度もあがったという解釈でもいいのかもしれないが
そういう冷静ぶった物言いもイヤだと思わされる。


熟練のR&Bレビューのようにかっこいいものでありながら
同時に
胸を激しくかきむしる
不器用でぶかっこうな感じ方を
自分たちにもファンにも許してきたのが
彼らだと思う。


音楽に対して
バンドに対して
あきれるほどバカ正直。


バカ正直という言葉には
バカも
正直も入っている。


その誇り高いバカ正直を
若さに任せて武器みたいに振り回したり、
こねくりまわして理屈だけ吐くのではなく、
今の彼らは
人生としてそのまま受け入れる覚悟(ブルース)に
達しようとしているところ。


リキッド・ルームがまだ新宿にあったころ、
あれは
ちょうど彼らがスピードスターからデビューしたころ、
コヤマシュウは
メジャーデビューを期に急に増えた客層を相手にして
奥のほうで煮え切らないふうに見ている客がいることを許さずに
パーティーを支配しようと
ちょっとやきもきするほど奮闘していたという記憶もある。


今夜
恵比寿のリキッド・ルームには
そんな心配はかけらもなくて
思わず笑ってしまうほどアッパーなリアクションが
いちいち客席から返ってきた。


そして
クライマックスでは
昔からやっているように
「TIGHTEN UP」から「OH YEAH!」へ。


それは
自分を曲げることを知らない
バカと正直のための祝祭であり、
しあわせな光景というしかない。


8時過ぎにライヴが終わってからは
足早に渋谷へ。


渋谷タワーレコードの1Fで
TUCKERのインストアにぎりぎり間に合った。


TUCKERの演奏に
裏切られたことは今まで一度もない。


ジョン・ブライオンとTUCKERの共演を
LAのラルゴで見たいというのは
ぼくのひそやかな夢だ。


ただ思い浮かべるだけで
それをおかずに
ごはんが食べられる。


さらにその後、
阿佐ヶ谷rojiターンテーブルが導入されたというツイートを見て
ちょっとだけ道草。


高城くんが働いていたので
昨日のソロ・ライヴの感想を告げた。
ソロでは基本的にやらないというceroのレパートリーから
大停電の夜に」を弾き語りで聴けたのがうれしかった、とか。


ターンテーブルの上では
サザンオールスターズの「熱い胸騒ぎ」が回っていた。


A面終盤の最強の2曲
「恋はお熱く」から「茅ヶ崎に背を向けて」。


「いつかDJさせてください」と
生ビールを飲みながらお願いすると
「ZEナイトとか、是非やりたいですね」との答え。


帰り道すがら
そう言えばサザンの「勝手にシンドバット」も
ちょっとリミックスしたら
ZEというかミュータント・ディスコっぽくなるかもね、と思った。


ちょっとだけピッチをあげてさ、
高音めいっぱいで桑田の歌もシャリシャリにしてさ、
ベースも全開ブリブリにしてあげたらさ、
ジェームス・チャンスやキッド・クレオールに簡単につながったり……。


それはいい!


ひとりでくすくすと笑った。