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なにかあり/とくになし

殊能将之さんのこと

小説家・殊能将之さんの訃報をきいた。


もちろん面識はなく
読者として一方的にファンなだけだが
殊能さんの残した作品はもちろん
もうひとつどうしても忘れられないことがある。


クレイジーケンバンドのリードギタリスト、ノッサンこと
小野瀬雅生さんの著書「小野瀬雅生のギタリスト大喰らい」を
2008年にぼくの編集で発売したとき
いちはやく殊能さんのブログでこの奇書を採り上げていただいた。


しかし
そこには賞賛だけではなく
編集者にとっては痛い指摘もあった。


それは
索引がなかったことについてのものだった。


こういう古今に稀なるB級珍味ギタリストたちを列記した本こそ
索引が必要なはずなのに
なぜそれを怠ったのかというもの。


索引については
編集作業上、たしかに一度は議題にあがったのだが
すでにページ数も作業日程も予定を超過していたこともあり
掲載を見送っていたのだ。


ぼくにとっては
まさに「すいません!」としか言いようのない指摘だった。


ところが
ここからが殊能さんの常人ならざるところ。


索引がないからぼくが作りましたと、
他人の著作であるにもかかわらず
労を惜しまずに索引を作成し
ネット上で公開してしまったのだ!


その執着心と愛情に
ぼくは頭があがらない思いになった。


残念ながら
殊能さんのブログも
その索引も
今はもう見ることができないようだ。


突然の訃報とあわせて
二重三重に残念だ。


だから
次につくる本には
絶対に索引をつけなくてはならない。
こないだ編集者との打ち合わせでも
索引は必要だと話した。


そのことで
殊能さんにすこしでもぼくなりのご恩が返せたらと思っている。