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なにかあり/とくになし

風街らうめん

何年か前、漫画家(志望)の女性と組んで、デビューをしようと試みていた。
ぼくが原作のロック漫画である。
ネタはこんなの。


「熱狂! カン祭り!」
史上初のロックフェス“カン祭り”。出演者すべてが“カン”! ドイツのCAN、日本の三上寛高木完、KAN! さあ、一番おいしいところを持ってゆくのは誰だ?(なんとなく、KANの予感)
続いて企画されているのは“コン祭り”。出演予定はアメリカのKORN、日本のブラザーコーン、大村昆、撮影監督で市川昆……。


「フランク雑貨」
街に新しい雑貨屋が出来た。店主は汚い長髪に鋭い目をしたひげ男(当然、フランク・ザッパ似)。怖そうだ……。ところが、いざレジに行ってみると、気さくにペラペラ話しかけてくる。「おれって、フランクだからさ……」。


「フィル・スベッタの伝説」
漫才ブーム華やかなりし頃、一世を風靡したコンビ、フィル・スベッタ&ウケタ。とりわけ、小柄でグラサンをかけ、いつも神秘的な笑みを浮かべているツッコミのスベッタにはカリスマ的な支持が集まっていた。
ところが、ある日突然、スベッタが失踪した。
失意に暮れながらも、ウケタはピン芸人として再出発。人の好さを買われ、やがて人気司会者として大成する。
そんなあるとき、ウケタの耳に「スベッタの隠れ家発見」との衝撃的ニュースが。
いつだって、スベッタのことを忘れた日は無かった。
ウケタはその不気味な屋敷に駆けつけた。
だが、ウケタの耳に飛び込んできたのは、空気を揺るがす圧倒的な音のこだま。
それは聞き覚えのある、あのフレーズだった。
「なーんでやねーん!」
そう、スベッタは自分の理想とする究極のツッコミを実現するために、大人数による「なんでやねん」を猛烈な音圧で録音することに数十年も費やし続けていたのだ!
これぞ、ウォール・オブ・ツッコミ!


ちなみに、「フィル・スベッタの伝説」は表紙扉も付いた3ページに及ぶ大作だった(他は1ページ)。


これらはきちんとペン入れまで施され、一部が某音楽雑誌に新連載の候補として持ち込まれた(実話)。
だが、残念ながらボツ。


ところが、捨てる神あれば拾う神あり。
われわれの作品を載せてもいい、という奇特な人物が現れた。


松永良平と彼女のコンビの作品が唯一掲載されているのは、OZ Discが製作した『はっぴいえんどかばあぼっくす』(CD5枚組)のブックレットに掲載された「風街らうめん」(見開き2ページ)である。
内容は書かないでおく。だいたい、上記3作品の路線だと想像してください。
われわれの名誉のために言うが、なかなか良いトリビュートではないかな。


あのブックレットでは、トニー吉田こと吉田明裕の書いた「はっぴいえんど全曲解説」が飛び抜けて素晴らしい。


なお、コンビはこの作品を最後になしくずし的に解散した。
作品は、まだ部屋のどこかにあるはずなのだが……。